- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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途中の血液脳関門の描写で少し引っかかって、これは違うよなあ、と思いながら読んでいたのですがしばらくすると、間違いではないのだろう、と思うようになりました。意識がどうなるのか、どこから発生するのかというのはだいぶわかってはいるもののブラックボックスである部分も多く、判断や理解にどんな経路がっ制化するとかはわかっていてもさすがに意識についてはよくわかっていないはず。そこは多少強引でも説得力のある「説」をぶち上げてくれるのかと思ったらそこは今ひとつでした。報酬系って意識の発生事態にはそれほど影響していないのではないかと思っているからかもしれません。
生体内を監視できるWatchMeというシステムが物語の核となっています。便利なシステムだな、と思う一方でここまで監視できるのなら違った方面でもいろいろと科学が発達していてもおかしくないのでは、と感じました。作中では医療をもとに発達した国家だそうなので、特化して進歩したのかもしれません。このシステムが発達したおかげでWatchMeを受け入れた人たちは痛みや苦しみを経験することはないみたいですが、うーん。この世界ではウイルスとのいたちごっこにも勝利したみたいですが、致命的な感染症などからは逃れられたとしても遺伝性の病気もあるしなあ、とか考え出すと、生まれるときに選別が行われているのでは、とか一箇所に集められているのでは、と怖い想像をしてしまいます。そのあたりは作品の中では描かれていませんでしたが、この長さでは仕方がないかもしれません。テーマが広大な割には話が短かったので、そこが少しもったいない。
文章は読みやすかったので次回作も読もうかな、と思う作品でした。