新書が評判になっているのは知っていたけれど、時系列としてはこちらが先に刊行していたのでこちらから読んだ。
このフィールドの生物学は、それぞれの著者が研究の進め方とか、向き合い方についても書いていて、どこに重点を置いているのかがなんとなくわかって面白い。下山貴さんや丸山宗利さんは、専門の分野があってもそれ以外の昆虫にも目を向けていて、博物学的な指向が感じられる。一方、前野さんは専門分野が固定されており、それに向かい合っている。どちらが良いというものではなく、研究テーマ的に、蝗害を押さえることを最終目的としているのであれば、サバクトビバッタ専門にならざるを得ないのだろう。
図にしてみるとあっさりしていても、ものすごい労力がかけられている。個人の仕事とは思えないくらいの量だ。形になっているものを示しているけれど、ネガティブなデータはもっともっとあるのだろう。そういうデータを示しているのだろうけど、どの図も結構きれいなデータだ。大きさとか時間とか、わかりやすい傾向が示されている。本文で少し触れていたけれど、論文と学会ではスライドを変えているようで、本に示されているのは学会寄りの示し方で、わかりやすいようにしているので、素人目にもきれいな図に見えるのだろう。素人の疑問としては、継代していっても性質は変わらないのだろうか、とか、エサの成分が変わったら(その年の草の成長具合で変わりそう)結果に影響しないのかとか、ホルモンの量は変えて検討したのか、とか。ホルモンの量は、先達が検討済みなのかもしれない。文章を読む限りでは、薬の量についてはそれほど厳密ではないのかな、という印象。泡の実験とかで、前野さんは再現性を取ろうとしていたけれど、こういう個人の偏執的な(褒めている)仕事によって得られた結果は、再現性を取ることが難しいだろう。かといって本人が再現性を取るためだけに同じ実験をすることはないだろうから、データの扱いはきっと慎重に慎重を重ねていたとおもう。それでも人はミスをするものだから、多少のミスは含まれているとして、確実な傾向が見られているのだから大筋としては問題ない、と考えているのかな。
自分だったらどうするかな、と考えつつ読んでいたけれど、群生相にならないためにはどうすればよいかを考えそう。孤独相に戻すためにどうするかとか。自然に帰るもので、粘度の高い液体を撒くのはどうだろう。触覚を感じさせなければ良いのであれば可能な気もする。または、不妊の蚊をばらまくように、次世代以降にホルモンの拮抗作用を持つ化合物を生体内で合成するように操作したバッタを撒くとか。これも、常に遺伝するのであればいずれすべてこのタイプに置き換わってしまうだろうか。あまり個体を増やすうえでのメリットはないだろうから、まあ、素人が考えることなんてプロはとっくに考えていて却下していることだろうから、今後画期的な対応が考えだされることを期待する。いつこの感想を書いたのか記憶にないのだけど、バッタを倒しに、が出たころのようだ。