鈴木紀之 すごい進化

 

 

進化は魅力的なテーマであり、生活に心配がないほどの財産があれば研究してみたいことの一つだ。いまだ、いろんな説があることも面白い。これまで、進化とは生物がいろんなパターンを作り出して。その中で環境にあったものが生き残ってきたものと受け止めてきた。この本では、適者生存のみではなく、制約についても触れられている。ハチに似たアブなど、言われてみると、何かに似せた動物はたくさんいるけれど、結構雑な似せ方をしたものも多い。完全に同じようにしてしまうと、天敵が避けるだけではなく、自分たちも間違える可能性が高くなるとの考えが提示されている。ホラー映画などでは、人間に似た外見の生物が宇宙からやってくることがあるけれど、あるフィルタを通してみたら区別ができたりする。動物でそのフィルタのような役割をしているものはないのかな、と想像する。たとえば、可視光(天敵が見える範囲のスペクトル)では毒がある生き物と似ているけれど、その生き物の可視範囲ではまったく別の模様に見えるとか。すごくそっくりな生き物(がいるのかどうかは知らないのだけど)で、そういった見分け方をしているものがあるかもしれない。似せ方が雑な可能性として、ある程度似ていたらあえて毒を持っているかもしれない生き物を食べないだろう、という考えも提示されていた。長くてくねくねしたものが飛んできたら蛇だと認識して驚くくらいなので、瞬時の判断材料としてのクオリティがあればそれで充分であると考えてもおかしくはない。

 

何かの意志で形や性質が作られたように考えがちだけど、たまたま今はその形があっているだけで、大きな存在が創り出していることはないだろう。似ているものが多かった時期があったのかもしれないけど、別のデメリットにより減少した、という過程があったのかもしれない。単純化しがちではあるけど、主要な因子に限ってもそれなりにあるし、ある面を見ても部分的に納得できる程度だ。それでも、ある生き物で立てた仮説が、他の生き物に当てはまったことが確認できた時などはとても面白いとおもう。内容はテントウムシなどの話が多く、偏っているかもしれないけど、多くを語るには紙面が足りないし、新書ならばこれくらいとがっていてもいいかもしれない。とても面白く読めた。