古宮九時 Unnamed memory 3巻

ちょっと詳しく書くと興を削ぐので曖昧に書くけれど、これまで読んだことが無い設定があった。この設定は読んだことが無いのでは、と思う。

そういうわけで、この巻については直接的な感想は書かないし、もしかしたらこの後も書かないかもしれない。それに触れずに内容を語るのは難しい。話はとても面白いので、読もうかどうか迷っている人がいたら背中を押してもいいのだけど、気に入らない人もいるかもしれない。アマゾンの感想を見る限り、そういう人は少数派のようだ。

他人への好意について、自覚したらそれを伝えるかと言うと必ずしもそうではない。今まで自分から好意を伝えたことは数回あるけれど、特に何も期待してはおらず、ただ、面白い隣人で終わるのも少し悲しいので伝えたのがほとんどだ。もともと相手方にパートナがいたこともあったし、実際には困惑させてしまったことのほうが多いと思う。好意を伝えて、それが受け入れられたらいわゆるお付き合いが始まるのだろうけど、一人身が続いている。特に嫌われてはいないと思いたいところだし、嫌いなわけではないと言われたこともある。残念ながら、誰かの人生を変えるほどの影響力はなかったのだろう。なぜこの話題になったかと言うと、本作では、結構はっきりと私はあなたと一緒に入れて幸せだ、と伝えることが多いからだ。はっきりと伝える主人公の姿勢にぐっとくる。言葉にしないと伝わらないよなあ、と思いつつ、はっきり伝えることに抵抗があるのはなぜなのだろう。

これから先、誰かに好意を伝えることはもうないかもしれない。積極的に人とかかわることはないので、その可能性は高い。好きだと伝えた相手から、好きだ、といわれるのはきっと幸せなのだろう。うらやましい気もするけれど、ワールドカップで優勝している人たちを見るような、自分とはだいぶ離れた地点での出来事のようにも感じる。物語は当然フィクションであり、もちろん自分自身ではないのだけど、ほんの少し、そういった幸せを分けてもらえたような気がして、読んでよかったなとおもう。