古宮九時 Unnamed memory 1巻

 

以前から読んでみたいと思っていたのだけど、ちょっと値段が高めなので何かのキャンペーンで安くなったときに買おうと思っていた作品。何かのキャンペーンで買っても読んでいない本はすでに何冊もあるのだけれど……。それはさておき、キンドルアンリミテッドで無料だったので読んでみた。感想を書くタイミングと公開するタイミングは必ずしも一致しないので、これを読んだ人が見に行ってもアンリミテッドではないかもしれない。ほしい本のリストに入れている本がアンリミテッドで読めるようになったら通知が来るようにならないかしら、と少し思う。最近は読み返すことも少ないので、アンリミテッドで読みたい本が3-4冊あれば、期間を区切って加入しても良いかなとはおもう。

会話のテンポが良く、場面も想像しやすい文章で、イラストによる補助もあって、とても読みやすい作品だった。ヒロインの声は堀江由衣で想像しつつ、楽しく読めた。見た目も良くて事務処理もできて強い、という非の打ち所がない主人公だけど、子孫を残せない呪いがかけられている。ヒロインはと言うと、美しく、最高の攻撃力を所持しており、魔法の知識も尋常ではない。死ねない呪いはかかっていなそうなので、不老だけれど不死ではない、という感じ。圧倒的な力を持ちつつ大きな制限があることを好意的に取る人と否定的に取る人がいる。前者は、多少の制限があっても意のままに生きたいタイプで、後者は、できないことはあっても制限されたくないタイプだ。どちらも結局は同じような気がするのだけど、現実的には大きな力を持つ人はごく限られているし、何かを乗り越えること自体も面白いことではあるので、後者の方が多いのかな、と感じる。

人に限らず、命を意識するとき、集団でとらえると重さを感じにくい。大切に飼っている鳥が死んだら悲しいけれど、似た鳥が焼き鳥になっていると知ってもそれほど悲しくはないだろ(たぶん)。こういう大きな力を持つ主人公(もしくは敵)が登場する作品では、人の命が数千、数万単位で失われたとしても、数行で片付けられてしまうことがある。どこか遠くの出来事で実感がないとか、身近な人がその中に含まれているとはあまり想像しないとかだろうか。

この感想を書いている現在、新型コロナウイルスの感染状況は、オミクロン株が登場したことで悪化したものの、人々の意識は、だいぶ感染してもいいのでは、という方向になっている。デルタ株に比べて重症化率が低いとの報道があったからだ。少し話は違うけど、大勢が感染したとき、自分が重症化しないと考えるのはなぜなのだろう。災厄はもう身近になりつつあるのに、どこか遠くの出来事ととらえているのだろうか。これまで、自分が重症化したとき、甘く見ていたことを後悔する、とのコメントを残す患者がいた。報道で取り上げられるのはそういう人ばかりで、多くは、感染してもやむを得ないと考えているのだろうか。そうは思えなくて、多くは感染し、重症化したことを後悔しているのでは。大人はそれでもかまわないけど、ワクチンを接種できない子供たちへの感染は極力避けてほしいところだ。症状に差があり、一見病気には見えないレベルで機能が低下する、低下し続けることがあるかもしれない。そうなると、周りからはただ怠けているように見えるだろうし、治療もされない可能性がある。子供たちにそんな思いをして欲しくはないものだ。希望があるとすれば、子供はほとんど重症化しないとのことなので、後遺症が出る可能性も低いかもしれない点だ。

もうすぐ、ワクチンを打ったら好きなように行動しよう、との流れになるのでは、と予想する。僕はもともと引きこもりがちなので、これからもそんなに出歩くことはないだろう。本の感想にこういうことを絡めるのは(読む側としても)あまり好ましくないのだけれど、しばらくは生活と新型コロナウイルスを切り離して考えるのは難しそうだ。