ワクチン・レース

 

 

ワクチンができるまでの物語。Kindleで買ったので厚さを今一つイメージしないままに読んでいたら、思いのほか長かった。最後の14%ぐらいは参考文献だけど。

ざっくりとした話はhttps://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v10/n9/%E6%AD%A3%E5%B8%B8%E3%83%92%E3%83%88%E7%B4%B0%E8%83%9E%E6%A0%AAWI-38%E3%81%AE%E5%85%89%E3%81%A8%E5%BD%B1/46063書いてある。だから読まなくていい、というわけではない。

これは従来のワクチンを作る方法の話だ。多くの人がワクチン開発に携わり、貢献してきたことが分かる。この話を読んでいて感じたのは、結果の解釈をどうとらえるか、つまり効果があったと大きくとらえたり、副反応が少ないと捉えたりすることはあっても、結果をねつ造する人が少ないことの高潔さというか、科学に対する姿勢の良さだ。結果をごまかす人がいたらそれだけ科学は遅滞する。ごまかす人がいないことが前提になっているからだ。データの再現性が無いことももちろんあるだろう。再現性のないときは、条件が一定ではないか、そもそも再現されないことかだ。ヒトが操作することだし、施設の条件も一定ではないので、再現性が無くてもやむを得ないこともある。反面、他施設にわたって再現されることは、科学的に事実であると言える。iPS細胞など、あれほど再現されるのであれば疑いようもない。と、ここで思い出したけれど、STAP細胞の再現を試みている人はいるのだろうか。あれは、本人ですら再現できない実験(実験ノートがないから)なので、同じような現象が起きたとしても、それはもう別の試験といっていい。陰謀論が好きな人がそれなりの数いるようなので、まだ支持しているひともきっといるのだろう。

ここにきてワクチンの開発は一気に進んだように見える。安全性や効果に疑問を持たれていたmRNAワクチンが圧倒的な効果を示した。安全性にはわずかに懸念が残るものの、これはかなり画期的なことだと思う。新型コロナウイルスのワクチンがどうこうではなく、mRNAワクチンが機能することが判明したことが画期的だ。次のノーベル医学生理学賞を取る可能性は高い。一般的なワクチンは健常人に向けて投与するので非常に高い安全性が求められる。しかし、これを抗がんワクチンとして使用するのであれば、安全性はかなり高い。癌の治療が停滞しているとも聞くし、今現在苦しんでいる人にとっては慰めにはならないかもしれないけれど、これから一気に癌の治療が変わる可能性が出てきた。とても楽しみだ。

mRNAワクチンができたのも、これまでのワクチンの開発があってのことだ。一つ一つ別の場所で積み重ねられてきたことがつながるのを見るのはとても面白い。mRNAワクチンはこれからもっと安価になるだろうし、各国で作られるようになるだろう。少し時間はかかっても、新型コロナウイルスの蔓延は食い止められることを信じてもう少し自粛生活を維持したい。