芝村裕吏 統計外事態

 

 

 

今回は統計を題材として、解析官が活躍する物語。会話が芝村裕吏らしい、といつも思う。騒いでいるようで、淡々としているようで、面白い。内容に触れずに感想は書きづらい作品だ。意図的にそうしたのだろう。感想としては、面白かった。以前の作品みたいな話かな、と思ったら違っていた。

作品そのものには触れにくいので、統計について思うことを書いておこう。最近、データの処理能力が高くなったのか、ビッグデータの扱いが以前より簡単になり、いろいろ解析されるようになってきた。世代別の動きを見たり、その地域や、時間など、いろんなパラメータを基に解析できる。解析とはいうものの、主に見た目の話が多く、本当に差を見ている人は少ないのではないかとおもう。以前、ビッグデータを解析すると見えてきたもの、とNHKで放送していたけれど、相関関係を因果関係のように扱っていて、それっぽく表現しているだけにたちが悪いと感じた。そういった批判もあったのかなかったのかは知らないけれど、以後同様の番組はないのではないだろうか。公的な判断のもとにするのであれば、統計的な解析は欠かせないが、全体の流れを捉えたいだけであれば、数値をビジュアル化するだけでも理解しやすくなる。全体を理解しやすいということは、反面、細部の理解がおざなりになる可能性がある。その辺のバランスは難しい。最近思うのは、新型コロナウイルスの感染者数の予測など、おそらくいろんなパラメータを考慮して算出したものに対して、要するにこういうことだろ、と理解が浅い人がいて、そういう人の声が大きいと、浅い考えが広がってしまうな、と感じる。知ったかぶった声の大きい人の意見が広まるのは、昔からあることだけど。

統計は、人が使いだした道具の中でかなり強力な道具だ。自分のデータも、全体から見れば塵芥のようなものだけど、それらが集まって何かが理解されてしまうのは、面白くもあり怖くもある。データを持つものの力が増していくのかな。理解不足ではあるけれど、意外に思った使われ方を見たことはない。データの、思いもよらない使い方をしているところを見てみたい。