伊藤総 生きる技術は名作に学べ

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

 空中キャンプの管理人、id:zoot32こと伊藤聡さんが初めて書いた新書。もともとすばらしい文章を書く方で、空中キャンプも良くみている。伊藤総さんはすごく映画をみるひとで、感想もすこしひねりがきいて(本人は素直に書いているのでしょうが)おもしろい。映画をみると、ものすごく気合を入れてみてしまうせいか疲れ果ててしまうのだ。本でも映画でも、一度みたものは、しばらくすると忘れてしまうけど、二度目にみるとき、冒頭をみるとだいたい思い出せる。ただ、本はたいてい頭のなかで映像化しているので、映画で見たのか本で読んだのかがわからなくなることがしばしばある。本を二度みるときは、以前読んだときに思い浮かべた情景を下地に、そのあと経験したこと、みたことをもとに、思い浮かべる情景が変化する。最近それほど再読することはないのだけど、この情景の変化がおもしろい。一方で、映画を二度観ることはほとんどない。テレビで再放送していたらみることもあるけど、そのときはBGVとして流すていどで、一度目のように真剣には見ない。映画も、二度目は二度目で前回よりも深くみることが出来るのだろうとはおもうのだけど、みた後の疲労を考えるとあまり見る気にはならない。時間もかかるし。あ、本もかかるか。伊藤聡さんは、すごく記憶力がいいのか、本でも映画でも登場人物のせりふを再現しているときがある。覚えているとはいっても、雰囲気というか、流を覚えているだけでそれほど詳細には覚えられない。固有名詞はすぐに抜けていくし。すごいなあ、とおもうのですが、見たものを評価するつもりで創作物に向き合う人はこういうものなのかもしれない。
 本書では、古典の名作と呼ばれる作品について伊藤総さんが語る。大雑把な内容は知っているものの、本文にもあるように、これは、読書感想の課題になっていたり、どこかでパロディをみたりしているからだろう。若いころから本は趣味として楽しんでいたが、どうも翻訳された文章が苦手で、いわゆる名作を読んでいない。名作を読み込めるのは若いころの特権、と本文にありった。自由になる時間が多いのは確かにそうだけど、大人になっても時間があるひともいるわけで(ここに)、時間が理由というよりも、感受性の問題かな、とおもう。世間ずれしないうちに触れた方がいいものはきっとあるのでしょう。ちなみに小中学生のころはホームズの子供向けの本とか、ライトノベルの走りのような、ソノラマ文庫を読んでいた。それはそれで楽しかったのですが、大人になってから振り返ると、もっと身を削るような作品(よくわからない表現ですが)を読んでいてもよかったかな、ともおもう。