汀こるもの フォークの先、希望の後

フォークの先、希望の後 THANATOS (講談社ノベルス)

フォークの先、希望の後 THANATOS (講談社ノベルス)

 ライトノベル風ではあるものの、なんとなく新書のほうがしっくり来る不思議な作品。エキセントリックな少年たちが登場しますが、三作目とあってだいぶ慣れてきました。主人公は、自分が望まずとも回りの人間をしに追い込んでしまう少年、美樹。今回はその能力を当てにする人物が登場します。
 現在の科学では解明できない技術で殺したとしても殺人犯にはならないようです。まあ、丑の刻参りで実際に誰かが死んだとしても「偶然」で片付けられるだろうし、呪いで誰かが死んだとしても呪いのせいだとは考えない。もしそんな能力が備わっていたら辛いと思う。まだ、自分が不幸な目にあうほうがましだと考えるようになるのか、達観してしまうかはわかりませんが、どちらにしても自分は何の被害にもあわず周りばかりが死んでいくのは恐ろしい。美樹はまだ少年ですし、達観は出来ていない。悩むし、甘えたくなる。それは多分当たり前のことで、それすら許されない世界はあってはいけない。
 美樹はお金に困ることはないし、外には出られないものの自分の好きなように生きていられる。これだけ見れば多少引きこもり願望がある身としては羨ましいところですが、やはりその能力が余計です。たまに何でももっているように見える人がいて、羨ましくなるよりも感心してしまうことがあるのですが、そういった人たちでも、こちらには計り知れない悩みがあるのでしょう。まあ、その悩みを聞くと「それは悩みではない」とかいってしまうかもしれませんが。
 タナトスに近づいても死なない(今のところ)仲間が増えました。これからどう展開していくのか、あまり終わりを見据えた進み方ではないように思えるので逆に楽しみです。