ヤマグチノボル ゼロの使い魔 9巻

 既刊の感想はここに。ハーフエルフの少女やルイズ以外の虚無の使い手が登場したので話が展開するかと思いましたが今回はどたばたコメディ色が強いないようでした。数々のライトノベルにあるように、異世界に行った、現世界では特にこれと言った特技が無い少年が急に評価されるようになったときどのような感想を抱くのかがこれからの焦点かもしれません。才人はまさにこれに当てはまる少年で、本当に普通の日本の学生だった才人がルイズのいる世界に来れば伝説の使い手であり、比類ない武力を持つようになってしまいました。それまで殆ど人の死に触れることも無く、責任とは何か、力を持つ者がしなければいけないことは何か、などこれまでの日常では考える機会の無かったことについて悩み、成長する姿が見たいと思います。
 登場人物の死をどのように描くのかはとても難しい問題だとは思いますが、今回の展開は感動の一面もあった物の少し残念です。主要な人物となってしまったら(特にライトノベルでは)、死んでしまうことで読者からの風当たりも強くなってしまうかもしれませんが、その他大勢の死をそれなりに重く描いていたのだから、身近なものの死についてもきちんと受け止める作品になっても良かったのではないかと思います。以後登場させることは難しくなってしまいますが、回想シーンなどで描いても、深みが増すことはあれ、安っぽくなることは無いと思います。
 まじめな話を切望する反面、これまでどおりどたばたコメディもはずさないでいて欲しいと言うのは多少わがままでしょうか。女性の登場人物ばかりが増えてきたので(しかもかなりの割合で好かれている)、それぞれの登場機会を考えると一人一人の割合はどうしても減ってしまうでしょう。ルイズが他の女性を気にしてその女性たちの特徴を取り込もうとするところはいじらしいです。本当は才人はルイズに惹かれているのだし、彼女自身のいいところ(どこだろう)を伸ばそうとしたほうがいいと思うのですが、そのあたりはまだまだ思春期真っ盛りの少女なので気がつかないのかもしれません。まあ、大人でも難しいところですが。この巻では最近あまり出番が無かったタバサが登場し、来月には外伝も発売されるらしいので少し楽しみです。