清水 マリコ ネペンテス

ネペンテス (MF文庫J)

ネペンテス (MF文庫J)

連作形式の短編集です。清水マリコさんとtoi8さんのイラストはもうすでにかなりなじみがあって、まだ他の組み合わせで読んだことはありませんが、もしかしたら違和感があるかもしれません。
物語は自分が動揺すると回りに不幸を及ぼしてしまうと考えている少年が主人公で、都市伝説めいています。主人公の他に相手の苦手とすることを読み取れると思い込んでいる少女が登場したり、キャラクタは面白いのですが、兄のことを好きな妹は狙いすぎかもしれません。
ウェブでは邪気眼といわれているのでしょうか、自分が特別な存在で何か特別な力を持っていると思いたい年頃があるのかもしれません。どちらかと言うといたって普通の生活を望んでいたのであまりそのあたりの気持ちはわからないのですが、学校生活ですごしていくために何らかのキャラクタを演じていた記憶はあります。大きくなるにつれて自分がいたって普通の存在であることに気がついて、それを受け入れることができたら恥ずかしく思うこともあるかもしれませんが、そんな時期があってもいいのではないかと思います。
特殊な能力ではなくて、この物語の主人公は何か嫌な出来事があったときと自分が動揺したときが同調したため、なるべく動揺しないように心がけるのですが、これもたまたま思い当たる節があったでしょう。時計などで、よく同じ並びの数字を見てしまうと思ってしまうのと同じで、印象に残ったときのことだけ覚えているのだと思います。だから、主人公は思い込みが激しいのだな、と言うわけではありません。子供のころは特に自分の力だけではどうしようもないことがあって、それでももしかしたら自分に責任があるのではないかと思ってしまうことがあります。他の人はどうなのか良くわかりませんが、子供のころの純真さと言うか、身の回りに対するちょっと変わった形での優しさが描かれている小説だと感じました。