渡瀬草一郎 輪環の魔導師4 ハイヤードの竜使い

輪環の魔導師〈4〉ハイヤードの竜使い (電撃文庫)

輪環の魔導師〈4〉ハイヤードの竜使い (電撃文庫)

 最近のライトノベルの傾向として「異性からの好意に鈍感な主人公」が多い気がします。この作品に登場する彼もそうなのですが、鈍感になった背景が書いてあるのが少し面白い。小さい頃からフィノの嫉妬に当てられていたらそれが普通に感じてしまうようです。鈍感というか少し歪んだ子に成長しそうですが、とてもいい子に育っていて、愛されて育ったのだなと感じられるキャラクタ。
 それにしてもフィノ、怖い。ここまで好かれたなら本望かもしれませんけど、ちょっと度が過ぎていますね。このキャラクタが後から生きてくることが期待されます。あまり熱心に好かれたことがないと言うか、好かれたことがないと言うか(悲しくなってきた)、なのであまりものすごくもてる登場人物に感情移入することが難しい。すべてのキャラクタに感情移入する必要もないのであまり気にしていませんが、ちょっと思ったのは、小説を読んでいてさすがにこんな性格の人はいないだろう、と決め付けてしまいがちなところがあります。日本とか、それに類した世界での出来事ならそれでもいいのかもしれませんが、ファンタジィとか、自分の知らない国(要するに外国)の出来事を描いた作品では自分の周りにいないような性格の人、考えられないような行動パターンをとる人がいてもおかしくないので、あまりそういった固定観念にとらわれないようにしたいなあ、と思います。
 この作者は「空ノ鐘の響く惑星で」で綺麗に作品を終わらせたという実績があるので、今回もどうなっていくのかが楽しみです。長編を書いてくれる人はそれはそれで好きなのですが、物語としてきちんと完結するのか読んでいて不安になることもあります。その点、この作者とか森博嗣さんはそういった心配はいらないので、違った楽しみ方が出来ます。違った、というよりも安心感を持って、といったほうがいいかも。もちろん続編に期待です。