細音啓 奏でる少女の道行きは

 富士見ファンタジア文庫の受賞作の続編です。ロールプレイングゲームで名詠士が魔法使いなら祓名民は戦士。
 祓名民として類まれなる才能を持つ少女がそのまま祓名民となってもいいのかと苦悩し、名詠士を学び始めます。最終的にどうなったかはここでは書かないとして、登場人物それぞれが悩みながら進んでいく様子が描かれていて良かった。前作の感想ではもっと長いスパンで作品を書いてほしいと書きましたが、どれくらい続くのでしょうか。あとがきを見る限りでは少なくとももう一冊が7月に刊行されるようです。
 主人公はまだ名詠を学んでいる少年少女たちなのですが、生徒の中に教師の実力をはるかに超えてしまう生徒がいたり、祓名民として最高峰の実力を持つ生徒がいたり、これまでの定義を覆す「夜色」を操る生徒がいたり、規格外の生徒が多すぎるのは少し気になります。才能が集まるときというのは得てしてこういうものなのでしょうか。ただ、名詠の力や戦闘能力だけがすべてではないことが示唆される部分もあり、教師たちは戦闘力だけではなく判断力などで生徒を凌駕してほしいところです。
 「色」は5色しかないはずなのに夜色もあれば別の色も登場してきました。もしかしたらいろんな色を組み合わせることもできるかもしれません。触媒の「色」を分離するとか。
 気になる部分はあるものの、心情の描き方とか世界の描写の仕方とか、好みの文章なので続編を期待します。最近いろんな受賞作家の感想に書いていますが、他の作品も読んでみたい。その世界を作り上げることは大変だっただろうし、大切にしたいのは良くわかるのですが、この作品を書いた人が想像するほかの世界はどんなものだろうと思うことも多いので、ぜひ他の作品も書いてほしいと思います。
 あと、竹岡美穂さんのイラストも好きです。最初に購入した動機はイラストによる部分も大きかったのかな、と思います。