小林めぐみ 魔女を忘れてる

魔女を忘れてる (Style‐F)

魔女を忘れてる (Style‐F)

文体がだいぶ変わっているので言われなければ小林めぐみ作品であることに気がつかないかも。それでも主役の双子の性格に小林めぐみらしさがあったし、新しい面が見れて良かった。
物語の主人公はそれぞれ親に対して抱えた思いがある少年少女たち。親から逃れて集まった秘密の場所には"魔女"がいた。魔女に関する記憶は少しずつ喪われていく。それが魔女の力によるものなのか、彼らの思い込みなのかはわからない。
夏の暑さと、子供たちの不安定さが描かれている作品でした。匂いの記憶は結構奥深いところにあるようで、ふとしたきっかけで普段は思い出しもしないことが蘇ってくることもあります。この作品ではある匂いが何度も描かれていますが、今度その匂いに遭遇したらこのことを思い出してしまうかもしれません。
最近ライトノベル出身の作家がハードカバで作品を出版し始めました。もともと小説であることに変わりは無く、あまりに荒唐無稽な設定でなければ一般の文芸作品でも受け入れられる素地はあったし、その素地がある人が表に出始めているのではないかと思います。小林めぐみさんはこのような作品はしばらく書かないのかもしれませんが、舞台は整ったし、今後もぜひ書いて欲しいと思います。