山形石雄 戦う司書と荒縄の姫君

戦う司書と荒縄の姫君 BOOK6 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と荒縄の姫君 BOOK6 (スーパーダッシュ文庫)

 この作品の面白さはそれぞれの武装司書が持つ能力と、それらを使いこなすことによる戦闘場面にあるのですが、それ以外にも力のないものがどのようにして生きていくかなどが描写されているところにあると思います。
 今回、史上最大の敵を迎えた武装司書です。これまでこれほど頭が悪いといわれたヒロインはいたでしょうか。いたかもしれませんが、実際にここまで活躍した上で、地の文に頭が悪いといわれてしまうヒロインに少し同情してしまう部分もありますが、突き抜けていると何かを成し遂げられるのかもしれません。
 好きな人が不幸にあったことで怒りを覚える。でも、その原因をたどれば自分自身にたどり着いてしまうこともあるかもしれません。そのときのショックは結構大きいもので、良かれと思ってしたことが、自分自身のエゴに過ぎないことを受け入れられるか。好きな人のために何かがしたい。でも、そのことで却って好きな人が苦しむかと思うと何もできなくなってしまう。何もしないことは好きな人にとっていいことなのかもわからない。自縄自縛に陥ってしまいそうですが、シンプルに動けばいいことと、よく考えなければいけないことがわかればいいのにな、と思います。
 ここで転換期を迎えた作品です。近年の新人ではかなり面白い方だと認識しています。確かに面白い作品なのですが、すぐに続きを読みたい、というタイプでもないのでそろそろ別の作品も読んでみたい。変わった設定の世界も良いのですが、現在ものとかの作品も読んでみたい作家です。