ヤマグチノボル ゼロの使い魔 5巻 6巻

ゼロの使い魔 (5) トリスタニアの休日 (MF文庫J)ゼロの使い魔〈6〉贖罪の炎赤石(ルビー) (MF文庫J)
 女王に即位したアンリエッタの風評を調べるため、貴族であることを隠して街に潜入したルイズと才人。慣れない酒場での仕事を懸命にこなそうとするルイズは任務をこなすことができるのか…(5巻)
 虚無の力を王女に求められたルイズは戦争への参加を認めてもらうため帰郷する。親を説得できないまま戦地へ向かうルイズ。戦いによって多くの死者が出ることに改めて戦争であることを実感する才人。戦いの結果得られたものは…。
  金銭価値が変わったのか、前のことは気持ちよく忘れてしまったのか。宿にとまるだけで400エキュだそうです。確か、1エキュが2万円相当だったような気がするのですが…。
 まあ、それはともかく、新しく登場したアニエスが活躍しています。それに関連してコルベール先生も活躍する場面がありました。「炎蛇」の二つ名をもつコルベール先生の実力を誰も知らなかったのか、と思いますが、時間が経てば人々の記憶からは消えていくものかもしれません。
 戦いに特化した能力を持つ才人ですが、戦いに対して疑問を抱き始めました。デルフリンガーの都合のよさに少々辟易していますが、それは言いっこなしでしょうか。少々真剣な側面が見え始めたこのシリーズですが、成長しないままではいつまで続くのかわかりません。その前に打ち切りになってしまう可能性が感じられるので少々不安です。数年たって、ある程度大きくなった彼らに活躍してもらい、物語を締めて欲しいところです。
 とは言うものの、少女がどきどきする様子が受けているのであろうこのシリーズでは期待できない展開かもしれません。異世界探検ものは小野不由美さんの十二国記神坂一さんの日帰りクエストシリーズがあります(もっとたくさんありますが、比較のために二つ挙げました)。どちらも好きな作品ですが、前者はもう戻れないのに対して後者はいつでも戻ることができます。戻れない場合はそこで一生を過ごす覚悟が生まれるでしょうし、行き来できるのであれば、現実社会の影響を異世界に及ぼすことの有無はあるかもしれませんが、現実社会の技術や産物を利用することができます。
 才人は元の世界に帰ることができるのか、と言う点がこの作品に注目している部分のひとつですが、作者はどちらにするのかを決めているのかどうかはまだわかりません。この世界に来ている人が才人の他にもいることはわかっていますが、戻った人がいるのかどうかはわからない。今のところ十二国記に近いような気がしています。さばさばした性格なのかもしれませんが、元の世界に対する執着があまり感じられないこともあります。
 そもそも、この世界に来るまでの才人の過去が全く描かれていないし、家族のことをどう思っているのか、親しい友人は居たのか、心惹かれる異性は居たのか、特技は、趣味は何なのだろう、などなど。この世界に来てから、ルイズやタバサなどの過去や人格を形成する出来事などは描かれています。でも、才人については全く描かれていない。ここが今のところ不満です。読みきりの作品ではなく、6巻まで続いた作品ならば、もう少し掘り下げてもいいのではないでしょうか。このレーベルでそこまで求めるのは筋違いなのかもしれません。でも、ライトノベルだからといって馬鹿にする気はありませんし、エンタテインメント部分と両立できないわけでもなく、決して無理難題ではないはずです。現に、最終巻では、才人は戦いの不条理さを感じたり、何を目的に戦うのだろう、といった疑問を抱き始めています。
  アニメ化されるようです。もともとアニメ化を意識したようなところが感じられる文章なのであまり違和感は無いと思いますし、2chライトノベル大賞では9位に入っている作品なので、人気があるのかもしれません。面白いことは面白いのですが、このままでは消費されて消えていく作品になってしまうと思います。悪く言えば、読了後にキャラクタ設定しか記憶に残らない作品になってしまうと思います。今のところ時間を割いてまで再読しようとは思えない作品ですが、今後の展開に期待したいと思います。