あくたゆい BLACK JOKER

BLACK JOKER ―少女たちの方程式― (富士見ミステリー文庫)

BLACK JOKER ―少女たちの方程式― (富士見ミステリー文庫)

 心理学を学ぶためアメリカに留学中の真純は、留学先で知り合った女性、ミシェルと友人になった。ミシェルはすでに博士号を習得していたが、あえて大学に再入学し一般教養から受講している。さらに、飛び級を繰り返していたミシェルは弱冠16歳であった。真純があこがれる日本語教師、西村はミシェルに惹かれていたが、ミシェルは彼の気持ちに気がつかない。最近、予告状のような手紙が届いた後、数学者が殺害される事件が続いていたが、なぜか日本語教師である西村の下に予告状が届いた。その予告状には暗号のようなものが書いてあったが、暗号を解くことができないと殺害されているのか、関係がないのかはわからない。西村は無事暗号を解き、助かることができるのか・・・。
 富士見ヤングミステリー大賞の奨励賞を受賞した作品です。話はまとまっていたし、謎もひねりを効かせてあったと思うのですが、可もなく不可もなく、といった印象です。理由は、会話に魅力が少ないということと、キャラクタに魅力が無いということ。この先続編が出たとすればそれぞれのキャラクタを掘り下げていくのかもしれません。でも、せめて主人公の二人ぐらいは一冊目から魅力を見せるべきではなかろうか、と思います。ミシェルはある人たちに慕われるのですが、どうして彼らがミシェルを慕うのかがわかりにくい、というよりもわからない。
 もう一人の主人公、真純は純粋であることは名前からも良くわかります。でも、彼女はまじめであることと純粋であること以外に特記すべきことがありません。小柄でかわいくてまじめで素直な真純は現実では申し分ない美点を兼ね備えていますが、もう少しプラスαがあればよかったと思います。
 巻末に解説があり、真純というキャラクタを増やしたとありましたが、真純がいなかったらいったいどんな話だったのだ、と愕然。真純にもう少し特徴があれば良かったと書きましたが、この物語自体真純がいなかったら成立しないのでは。つまり、ほぼ全面書き直しだということでしょうか。
 とまあ、あまり良くない部分を書いてしまいましたが、ミシェルが料理をする場面や少しずつ心を開いていくところ、真純が心理学を専攻しているからこそわかる(という設定のはずだ)ミシェルの感情の機微などは良かったと思います。おそらく出るであろう続編が出ても読まないと思いますが、別シリーズなら読んでみたいと思います。ところでミシェルという名はノストラダムスから来て・・・・・・いなさそうですね。