椹野道流 貴族探偵エドワード 赤き月夜に浮かぶもの

 最近ウェブ上では格差について話題になっていることが多いのですが、実際どれくらいの差があるのでしょうか。実際の体感としては高給取りって言うのはいるのだな、と思う程度であまりよくわかりません。ただ、一生懸命働いてもそれに見合わない不当な給料しか得られない、と言う状況は改善したほうが良いと思います。
 本作の主人公、エドワードは生活には何の不便も無く、一応私立探偵を営んでいるのですが両親のお金もあってあまり切実感はありません。エドワードはお金持ちのいい面であるおおらかさがあって、下々の暮らしを馬鹿にしません。こういったキャラクタは特にライトノベルでは多いのですが、現実にいるのでしょうか。
 まあ、現実にいようがいまいが魅力的なキャラクタであることに違いはありません。このシリーズは椹野さんもあまり固くならないで(と言うよりもそれほど重いテーマを考えずに)楽しんで描いているような気がして、こちらも気楽に読むことができます。それにしても、警察が魔物の存在を認めてしまったりしていいのでしょうか。ここはひとつ何を観ても聞いても受け入れない頑固な警官でいて欲しかったかも。まあ、それだけ柔軟な思考の持ち主だと言うことですね。登場人物も結構そろってきて、これから盛り上がるところでしょうか。シーヴァとハリエットの恋愛模様がいいですね。一応未亡人であるハリエットですが、純情さがたまりません。シーヴァはエドワードの教育(後見人)に忙しく、これまであまり恋愛経験が無かったのでしょうか。二人とも年齢がよくわかりませんが、この二人のやり取りは好きです。
 これからは追うものと追われるもの、どちらもその立場を意識した行動になるのでしょうか。魔物が出てきて当たり前になると犯人を想像することにあまり意味は無いかもしれません(薬屋探偵のようにとんでもない展開になることもありえる)。前回も書いたかもしれませんが、主人公のエドワードよりも脇役の方が魅力的な作品です。と、ここで前2作の感想を読み返しましたが、同じことを言っている…。いや、まあ、良いんですけど。次回作が待ちきれないほど面白いわけではないけれど、それなりに楽しく読める作品です。