冲方 丁 スプライトシュピーゲル

半分ぐらいまではものすごく読みづらい小説でした。慣れてしまえばあまり気になりませんが、場面やキャラクタを/で区切った描写とかが読みにくく、アニメーションの原作なのだろうかと思えます。助詞を省く分でスピード感とか情報量の密度が変わるのでしょうが、慣れるまでは最後まで読めるのだろうかと思いました。あと、キャラクタの名前が読みにくいということもあります。
物語は体の一部を機械化された少女たちがテロリストを退治するというもの。近未来の話で、さすがにこの年代だと無理だろうなあ、と言う技術満載ですが、世界情勢を組み込もうとしているのであまりに先の話にはしたくなかったのかもしれません。
体を機械化することになった理由とか、少女ばかりが選抜された理由が書いてありますが、後付感あふれる理由です。本当の理由は少女が主人公の方が売れるからとか、単純に好きだからなのでしょう。そこまで不自然な理由でもないのですが、数行で済ませているあたり、触れたくない部分なのかなと思います。
キャラクタの造形はまず間違いなくアニメ化を想定しているもので、読んでいる間アニメのノベライゼーションかと思うことしきりでした。マルドゥック・スクランブルの件もあって、どこまで実現するかはわかりませんが、当然アニメ化や漫画化もあらかじめ視野に入れた作品です。
そういった商売くささを吹き飛ばすほど面白いかといわれると、うーん…。少なくともアニメや漫画は見ませんが、小説に関しては値段相応の価値はあるかな、と言う程度。続けて購入するかはちょっとわかりません。物語のつながりがどこまで広がるのか、とかで評価が変わると思います。森博嗣さんや伊坂幸太郎さんの作品のように、意外な点、場面でつながっていることを楽しむのではなく、あらかじめつながっていることが前提なので意外性はありません。それをどこまで楽しめるのかがポイントだと思っています。せめて3冊目までにはつながっている場面が出て欲しいし、その後には同じ物語を違う視点から見たものとか(どちらも正義と信じて行動するが相反するとか)もあれば良いなと思います。