雪乃紗衣 彩雲国物語―想いは遥かなる茶都へ

 研修期間が終了し、茶牧として政に携わることとなった秀麗と影月。それを好ましく思っていない茶一族が妨害の手を伸ばす。旅の途中、秀麗はほかのメンバと別れ別れになり、隊商にまぎれて関門を通過することを選択した。黄奇人の印の効力もあって、無事対象に紛れ込んだ秀麗。その隊商を率いるのは、御気楽な二代目の若様で、商業連合が紹介する以前に秀麗と顔見知りになっていた青年だった。秀麗は無事茶州にたどり着けるのか。そして残りのメンバも怪我をせずに到着できるのか・・・。
  彩雲国物語第4弾です。ここまで順調に読み進めてきましたが、やはり十二国記には及ばないかな、というのが正直な感想。しかし、これがデビュー作であることですし、さほど厳しい目で見なくてもいいとも思っています。
 今回のメインはお茶です。少しずつ生活が表されてきているでしょうか。色分けされているはずなのに茶州だからお茶が名産というのはありですかそうですか。燕青はいい男だな、と思う一方、似た境遇のはずの静蘭が少し子供っぽく見えてしまいます。それも、燕青あってのことらしいので、さすがは燕青と言っておきましょう。こめつきバッタ呼ばわりですが、それも気にしない。大きな男ですね。
 香鈴は何歳だったかな、と早くも思い出せない設定が出てきました。まず間違いなく影月よりは年上のはずですが、次第に惹かれつつある姿はかわいらしいです。登場人物ほとんどか過酷な人生を乗り越えてきており、それでもたくましく生きているのですが、年齢よりは大人じみています。秀麗に恩返しをしようとする香鈴ですが、ようやく子供らしい姿が見えます。あまり早く大人にならなくても良いのだよ、と言ってあげる大人はいません。それだけ、世界は過酷なのでしょう。だから、無関係な神の視点から見ている読者として、そういってあげたい気分です。
 官吏になることに全精力をつぎ込んできた秀麗ですが、ようやく恋に目覚めそうな雰囲気です。見守っているつもりの彼はどこまでその気持ちを抑えることができるでしょうか。茶州に到着し、これから州牧としてさらに実力を問われることになるであろう秀麗と影月ですが、少しは潤いのある人生を歩んで欲しいかも、と思ってしまいます。もう一人浮世離れした彼がどうかかわるかも少し楽しみ。
 ところで、見た目は十人並みなのになぜか男前にもてるという話をどこかでたくさん読んだような気がして、もやもやしていましたが、わかりました。漫画家マリナです。そういえばあのシリーズは途中で立ち消えてしまったなあ。としみじみ。このシリーズはぜひ完結させてもらいたい、と思います。