竹宮ゆゆこ わたしたちの田村くん
- 作者: 竹宮ゆゆこ,ヤス
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/06
- メディア: 文庫
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優秀な兄とスポーツ万能の弟を持つ田村雪貞は兄弟とは違いごくごく普通の中学生。周囲の恋の勢力図からはみ出していた雪貞は松澤小巻に目をつける。美少女である小巻だが、進路調査に「故郷の星に帰る」と記入してしまう電波ちゃんであることから周囲からは浮いた存在だった。雪貞は小巻とコミュニケーションをとることが出来るのか・・・。
日常系ライトノベルです。雪貞君は上下に優秀な兄弟に挟まれているのですが、彼の環境にしては驚くくらい劣等感がなく、ニュートラルな性格を維持しています。このような環境だったらクールなふりをするとか無常観に浸ってしまいがちですが、雪貞君が優れているのはこの過剰に無理をしないスタイルなのかもしれません。以下、少し内容に触れるので隠します。
1話では松澤小巻に粉ををかける雪貞君ですが、自分勝手な行動がまるで小学生の頃から変わっていないかのようで微笑ましい。実際に見かけたらうっとうしくて仕方がないかもしれませんが。他の同級生は奇矯な言動を取る小巻から距離をとります。これはある意味当然であり、非難される類のものではありません。でも、雪貞は小巻とコミュニケーションをとろうとし続けます。その結果、小巻が取る言動の理由を知ることとなります。初めは自分勝手なアプローチであり、いつから本当に好きになってしまったのかはわかりません。でも、人を好きになると言うのは結構そういうものかな、と思ってしまいました。
小巻との別れのあと、雪貞は気の強い学年髄一の美少女、相馬広香と知り合います。小巻の行動のように、広香が周囲を寄せ付けないことにも理由がありました。ここでも雪貞は分け隔てない会話をすることが出来ます。あまり考えていなかった、と言うのが現実かもしれませんが、人付き合いに距離を置いてしまう広香が自然な会話をしてくれる雪貞に惹かれるのも無理はないのかもしれません。ここでも、雪貞が自分を過剰に大きく見せず、自然に人付き合いをすることが兄弟とは違った”魅力”として描かれています。
雪貞が自分から好きになった小巻。両思いになったものの物理的な距離が二人を引き離す。そこで自分のことを好きになった広香。小巻のことを忘れたわけではない雪貞が今後取る行動は・・・。
続編が出ているようですが、近所の本屋さんにはありませんでした。早く続きが読みたいな、と思います。