大沼紀子 真夜中のパン屋さん

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫)

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫)

イラストとタイトルから西洋骨董洋菓子店をイメージしたけど、特に似た部分はなかった。特に大きな事件が起きるわけではないのだけど、文章は読みやすい。あまり登場人物の数が多いわけではなく、物語が進むにつれて主人公格の人物は過去が描かれる。でも、何と言うか、こういう性格だからこういう人生を選んで、今の人物像が形成されたのだなあ、と感じられない。過剰にエキセントリックな人物がいるわけでもなく、どうしても理解できない描写もないのだけど、なんとなく腑に落ちない。「パンが好きでいつの間にかパン作りの名人になっていた」と言うのは、ずっとずっと必死で生きていた人間がどうやって成功したのかを思い出そうとした瞬間とかの描写なのではないかなあ。まあ分からないでもないのだけど、今も現役で、しかも才能にあふれていたのかあまりその面では苦労をした様子もない青年を描くのには不足なのではないかしらん。
と言うわけで、あまり感情移入できなかった作品なのだけど、なんとなく好きな作家に化けそうな予感もするので、しばらくは作品を購入するかも。