[読了] 庵田定夏 ココロコネクト キズランダム

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

このシリーズはなかなか面白いかも、とおもったので既刊の残り2冊を購入。これも面白い。実生活でもありがちなのですが、自分だけが苦しんでいて他の人は楽しそうにしているようにみえることがあります。当然、他の人もそれぞれおもうことがあるでしょうし、悩みもあるのでしょうが、自分だけが苦しいと思い出すと、すさんだ性格になってしまうので(自分の場合)、そう思わないようにしています。それはさておき、今回は欲望が増強されてしまう話。増強されようがなんだろうが、それはお前が「望んだ」からだろう、との理論展開で責めてきますが、この理論で抑えられてしまうのは、まだ比較的狭い社会にいる学生ぐらいではないでしょうか。まわりとのバランスを考えて、そのなかで選んだ答えが「望んだ」ことの結果なのだから、ちょっとしたいな、とおもった程度のことを行動に移していては大変です。というわけで、今回の欲望増強は、薬物などで自制心が失われたような状態を、ごく一時的にもたらしているのでしょう。彼らはただおもしろくしたいだけのようなので、適当に煽っているだけでしょうが。この作品で面白いな、とおもったことのひとつに、超常現象の理由をむりやりこじつけない、という点があります。こんな話を創ろうとおもうと、どうしてもその理由をむりやりもってきそうな感じなのですが、天変地異のような、どうにもならないこととして収めています。たぶん、最終的には彼らがいなくなって「いったいなんだったんだ」と締めるのではないかと想像していますが、どうなるでしょうか。彼らはこういった現象を「面白くするため」におこしているわけですが、その面白さはおそらく「目をそらしていた点に、主人公たちが目を向けるか」にあります。大人になってしまうと、目をそらしていたことに向き合うことも(どうしようもなくなるまでは)ありません。大人が、というわけでもありませんか。たぶん、こんなにキャラクタが立っていなくても、人が「目をそらしていた点と向き合う」姿は興味深い。