有川浩 県庁おもてなし課

県庁おもてなし課

県庁おもてなし課

県をアピールするために、一応機動力を期待されて創られた県庁おもてなし課。しかし、実際は既存の企画を後追いするだけであったり、それすらも非効率的で、お役所体質はぬぐえない。そこに配属された主人公は、県出身の作家のアドバイスを元に民間人を受け入れ、すこしずつではあるが周りを巻き込んで、組織の風通しがよくなっていくという話。
この話のように大きなお金が動いたりするところでは、この作品に出てくるような、硬直した組織なのだろうとはおもうけど、役場の窓口なんかはだいぶ改善されている。愛想よくしなきゃ、との思いが強すぎるのか、ときどき笑顔が引きつっていたり、いかにもすぐ対応していますよ、といいたげな対応になっている部分もあるけれど、それは微笑ましい部類に入る。実際に利用する部門といえば、税金関係が少々と、住所がうんぬん、ぐらいか。どこでもそうかもしれないけれど、お金を徴収する方は優しくて、払う方はしわくなるのだろう。今の会社は公務員ではないくせに、体質が公務員的だ(公務員を良く知らないので想像だけど)。
有川浩の作品を読んでいると、何か些細なきっかけや、ほんの少し方向性を示すひとがいるだけで、人生って劇的に変化するのかも、なんておもってしまう。実際にそんなことがあったか、というとあまりないけれど。そこまで劇的ではないとしても、何かしら影響力のあるひとの近くにいたら、多少は人生変化があるのかな。これまで、仕事で影響力のあるひとに係わったことがないのだけど、遠巻きに話を聞く限り、影響力があっても口出しをしない人や、声だけが大きいひと(言っていることが理論的ではない)が多い。家族経営の会社なので、正論だけれど実際にはできていない点を付く人はほとんどいない。じゃなかった全くいない。文句を言うと即、辺境(仕事的な意味で)に飛ばされる。そこまでしていいたいことか、と自問自答。まあ、飛ばされてもいいからいってみよう、とおもって直接の上司に言ったことはなんどかあるのだけれど、そこで意見は止められる。直接言うと、(部下の管理ができていないという理由で)間にいる上司が飛ばされるので、さすがに他人を巻き添えにしてまで諫言したい内容でもない。
さて、それはともかくとして、異性であれ同性であれ、一緒に仕事をするといい面も悪い面もみえてくる。今回登場した二人は、比較的いい面ばかりをお互い見ていた。成長する時期だとそういうものかもしれない。または、あばたもえくぼ、なのかもしれない。あまり、関係が終わったから、じゃあ前の通り、とは行かない性格なので、社内で恋愛関係になってしまったら後が恐ろしいわ、と考えてしまい、社内でそういう関係になったことはない。そもそも、同じ班の人間以外ほとんど話すこともないのだけど。世の中で社内恋愛しているひとって、失敗を恐れないのか、失敗なんてしないと自信たっぷりなのか、終わったら終わったですっきりと無かったことにできるのかわからないけれど、すごい。
物語では、ある程度育てたのだからもういいでしょ、と言う親が登場する。そういうひともいるのだろうし、特別否定するほどのことでもない、ような気もする。程度の差はあれ、いつかは親子が別れる日は来るし、親が必ずしも子どもに完全な愛情を持つとも限らない。後者は、特に理想ばかり言うひとの話を聞いたり、ブログで読んだりしたときにおもうのだけど、愛情はあったほうがいいけれど、必ずしもなければいけないものでもない。虐待しなかったり、成人するまでは何とか育てる方が、よほど重要なのではないかとおもう。6+3+3+4より長い間学校に行っていたし、仕送りももらっていたので、すごく感謝している。自分が子どもに対してどのような感情を抱くのだろう、と興味があったので、子どもを育ててみたかったな、と今でもおもう。これは、あとから何とかなるものでもないから、本気でそう望んでいる人は早めに行動した方がいいとおもう。