- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/04/11
- メディア: 文庫
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春期限定苺タルト事件の続編です。前作の感想は書いていませんが、面白い作品でした。自意識過剰気味と思われる高校生の常悟朗とゆきが身近な事件を解決するシリーズですが、こんな高校生活も(大きな事件に巻き込まれることがなければ)楽しいかもしれません。少なくとも、高校生のころは簡単な知恵比べをする相手もいなければ、身近な日常の事件もほとんどありませんでした。
自意識過剰気味、と書きましたが、本作の登場人物はそれを自覚しています。中二病とか高二病とか言うつもりはありませんが、自意識過剰であることを自覚している人は子供でも大人でも結構少ないのではないかと思います。
本作は短編として発表された2作品を含んでおり、それらは独立した”日常の謎”をテーマとした作品となっています。もちろんそれだけでも十分楽しめる作品ですが、長編として通してみることでそれぞれに伏線が敷かれていることがわかります。最終章ではゆきがなぜ常悟朗を連れまわしていたのかが明らかになりますが、その理由はここまで通してみた読者にとってはあまり難しい謎ではありません。このシリーズはもちろん、最低限でも秋期、冬期と続くものだと思われますが、二人の関係がここでこうなってしまうのは仕方がない、と思いつつも残念です。
普通の高校生(というのが今はどのようなものかよくわかりませんが)のように、淡い恋愛を楽しんでもいいのではないか、と思いますね。それぞれが”狼”や”狐”であると思い込んでいるとの自覚はあるのに、お互いに好意を持っていることはなかなか気づかない二人です。傍から見ていて思い込んでいるだけかもしれませんが。もちろん、続編に期待大の作品です。