久住四季 トリックスターズD

トリックスターズD (電撃文庫)

トリックスターズD (電撃文庫)

 学園祭を前に浮かれた気分の学生たち。天之原周はコスプレパーティに参加するため、スーツを着込んで学園に向かっていた。今年の学園祭で魔術を見せるという”世界に六人しかいない”魔術師の佐杏冴奈。彼女もまた学園祭に浮かれていた。その学園祭の初日、”ぼく”と三嘉村凛々子は校内のある棟に閉じ込められた。棟内は魔術の結界によって覆われているという。作中作が登場し、現実と作品の境界があいまいになる奇作…。
 当初は作中作が出てきたことでこれまでの作品の内容を否定しているのかと思いました。あまり作中作、というかメタ視点の物語は好きではありません。理解しにくい、ということもあるのですが、物語を入り組ませようとする作者の意図が空回りしている場合が多いからです。
 今回、魔術師の佐杏冴奈が活躍する場面は、その描写量からは少なかったです。そのことが作品の魅力を半減しているとは言いませんが、物語の大半が結界に閉じ込められた中での話で、これまでに発表された前作の係わり合いが今ひとつ入り込めなかった原因であったとは思います。また、今回新たに登場した人物たちに魅力があまり感じられなかったことも今ひとつ楽しめなかった理由のひとつではあります。この著者は、どうも脇役の使い方が今ひとつなのかもしれません。前2作はそれなりに楽しめたし、今回自分の好みではないメタフィクションに仕立て上げられたからそう感じるだけだ、と客観視している自分もいます。
 学園祭は全部で3日間あるとのことで、以降も学園祭を舞台にした話が続くのでしょう。最後に明かされた設定が、これまでに明かされていたかな、と思いましたがあまり記憶力に自信がないのでなんともいえません。前作の感想はここですが、話の流れ自体はともかく、内容はあまり評価していませんでした。忘れてましたが。次回作で、今後も読むかどうかを決めようかと思います。