五代ゆう パラケルススの娘3 仮面舞踏会の夜

 全身の血を抜かれた他殺体が多数発見され、犯人に恐怖するロンドンの人々。犯人に思い当たる節があるのか、多くを語らないクリスティーナ。遼太郎を慕うものの、妹としてしか受け入れられない和音は、舞踏会でダンスを踊っている間に行方不明となる。知人の助けを借り和音を探し当てた遼太郎。そこで出会ったのは……。
1巻の感想はここで2巻の感想はここです
 遼太郎のことを慕う和音ですが、なかなかうまくはいかないようです。男性としてみているのならば「遼兄様」という呼称を改めたほうがいいと思うのですが、どうでしょう。ライトノベルのイラストとしては比較的年長にイラストが描かれている遼太郎ですが、文章を読む限りはもっと幼く感じます。婚約者の気持ちにも気がつかないし、まだ遼太郎自身、誰かを好きになったことが無いのかもしれません。その点、バ(略)は正直に認めないもののクリスティーナに焦がれており、そのためには愚直なまでに努力を惜しまない姿勢が好ましい。1巻の感想では、

「自分が無力であるのを知ることがそれほど嫌か?今のおのれが、自身の望むような姿ではないことがそれほどおぞましいのか?腰抜けめ。だったらなぜ努力しない?出来ないと口にする前に、なぜやってみようとしないのだ。自分が自分の望むほど能力が無いと思ったなら、あるべき自分に少しでも近づこうとするのが誇りと言うものだ」

と言い切るバシレウス君でしたが苦労知らずのぼんぼんだから言えたのではないか、と書きましたが、ここまで読み進めて、少し感想が変わりました。彼は空気が読めていないかもしれませんが、彼なりに努力を重ねています。そのことは、出自に関係なく評価しなければいけないポイントでした。1巻のころは努力と言う名の遊びをしてきたのかと思いましたが、どうやら真剣な様子。理想に燃えるだけの小僧ではないことが察せられます。想いが届くことは無いのでしょうが、努力はきっと無駄にはならない。彼にも良い相手が現われるといいのですが。一方、遼太郎は前作で登場したあの人も含めて誰を選ぶのか、それとも誰も選ばないのか。
 若いころ、クリスティーナと交流があった、たか女さんはクリスティーナやレギーネから賞賛を受けており、どのような人なのか気になっていましたが、次巻でその様子が描かれるようです。そのほかにも伏線はいくつも巡らされており、サー・マクスウェルの大切な友人はおそらく現代では○○○と呼ばれる方でしょうし、クリスティーナが「聖なる血」と呼ばれる理由はその人の血を(一部でも)受け継いでいるからでしょう。ここまで断定しておいて違っていたら間抜けですが、むしろそちらを望んでいます。簡単に予想できる展開も王道として面白いのは面白いのですが、意外な展開になったときも心地良い。このシリーズは出版ペースが速いようなので楽しみです。