ゼロの使い魔 10巻

 これまでの感想はここです。
 王女の側近となった才人がどうなるのか、と前巻の感想では書きましたがその部分での成長は先送りになったようです。今回はタバサが絡んだ物語で、これまでの主要人物も活躍します。場面としては少なかったですが、憎しみにとらわれていたあのひとがその呪縛から完全に逃れたとはいえないまでも、憎しみの連鎖を止めた、止めようとした場面がよかったです。
 これまでもずっと感じていたことですがこの作者のつかう「せつない」に違和感を覚えます。乱用しすぎ、と言うだけではなくて語感が違うな、とそこかしこで感じました。まあ、それは世代間の感覚差なのかもしれません。著者はそれほど若いわけではありませんが、ライトノベルをずっと描いていることから言葉の使い方は若者のそれに近いのでしょうか。
 今回のもうひとつの目玉として、これまで恐れられていたエルフが登場します。どうしても力のインフレがおきてしまいがちですが、今後どのように展開していくのか楽しみです。少し前に登場したエルフの女性もきっと今後の展開に絡んでくるでしょう。
 正直イラストは子供じみていて好みではありませんが、このイラストがあってこその人気なのかもしれません。アニメも全く見てはいませんが、凄い人気ですね。アニメや漫画では別の作者ですし、あとがきにもあるように自分が作った世界が広がっていくのを見るのはたのしいのかもしれません。自分の世界観に固執する作者もいるでしょうし、その意味では懐が広い。
 主人公のルイズはいつも自分に自信が無く、浮き沈みが激しい性格ですが、完全無欠の主人公よりも何か欠けるものがあってそれを埋めようと一生懸命になっている方が良いと思います。持っている力の割には望むものが少ない少女ですが、いつか自分の持っている力の強大さに気がつき、その価値を前面に押し出すかもしれません。今はまだおふざけ程度ですが、今後そういった展開はあるのでしょうか。ここで書いた予想(希望)は大概外れるのであまり期待はしていませんが、今後も読もうと思える作品です。