古橋秀之 ある日爆弾が落ちてきて

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)



 あるテーマを題材に描いたボーイ・ミーツ・ガール作品の短編集です。各話について少しずつ感想を。
 -ある日爆弾が落ちてきて
 予備校通いに倦んでいた長島の下に落ちてきたのは自称高性能爆弾のピカリ。彼女は昔恋した少女に似ていて・・・。誰かが亡くなっても残された人間の時間はこれまでと変わらず流れていて、それはある種の感傷を呼び起こすけれど決して悲しいわけではありません。誰かのことを思い出す、少し切ない話でした。
 -おおきくなあれ
 くしゃみをすると年齢退行が起きる奇病。幼馴染がそれに罹ってしまい・・・。幼馴染でも思春期になると関係がぎくしゃくしてきて、これまで名前で呼んでいたのが苗字になったりすることってありますね。退行する幼馴染を見て昔を思い出すのもいいかもしれません。好きな話でした。
 -恋する死者の夜
 死者が蘇り、生者とともに社会生活を送るようになった。死者は印象的だった日を繰り返すが・・・。死者にとって天国でも、生者にとっては地獄かもしれない、と言う一文に考えさせられるものがありました。思考している時点できっとまだ生きていると思えます。
 -トトカミじゃ
 歴史のある学校で唯一昔から残っている建築物が図書館だった。その図書館には神様がいて・・・。年月をかけた恋物語。何ともロマンチックな話です。何を隠そう、そんな話もすきなのです。最後は二人を同世代の姿にしてほしかったかもです。
 -出席番号0番
 毎日憑依する対象が変わる日渡。実体のない彼女だけど、中身は周りと変わらない高校生で・・・。設定が面白くて最後も甘酸っぱい(うひゃあ)終わり方でした。大人になっても誰かに取り付いていろいろするのかな。
 -三時間目のまどか
 教室の窓から見えたのは異世界で授業を受けている少女。会話をするために手話を覚えようとする二人。歪んでいたのは空間ではなく・・・。彼は彼女に恋したのかそれともただ単に面白かっただけなのかはわかりません。ちょっかいをかけてくる同級生の立場がちょっと今後複雑かも。
 -むかし、爆弾が落ちてきて
 時間干渉爆弾と言う兵器で時間を止められてしまった少女。”ぼく”の祖父は彼女と知り合いだった。彼女に惹かれる”ぼく”がとった行動は・・・。テーマに沿った話を考えたのだと思いますが、ちょっと無理があるかも知れません。結局彼女にとっては時間を止められただけだし、”ぼく”は自ら時間を止められただけなのではないでしょうか。


 始め、自称爆弾の少女が落ちてくる話なのでもしかして痛い子の話だったらどうしようと思っていましたが、まあ、短編集だからと言うことで他の作品に期待していました。が、とても面白かったです。現象の説明がないのも良かったし、名前に若干捻りがあったのも良かったです。最後の解説は無理には要らなかったかな、と思いました。