レッドデータガール 萩原規子

完結したらまとめて読もう、と発売しているのを見たらすぐに買っていたものの、結局積読になっていた。アニメ化もされていたな、と表紙を見て思い出しつつ、まとめて読んだ。子供が成長するような作品は、少しずつ間隔をあけて読んだ方がいいかも、という自分と、まとめて読んだ方が細部を忘れなくていいかも、という自分がいる。いつも、実際にした方の反対を、少しだけ考えてしまう。
作品はというと、田舎で大事に育てられていた少女は、何も知らずに育ってきたが、放っておかれたわけではなく、あえてそのように育てられていた。その理由は、少女が大きな力を継ぐ者として重要な存在だったからだ、という話。幼馴染、ライバル、仲間、敵、偉大な先達と熱くなる要素は多いのだけど、主人公がぼんやりしているのでそこまで燃えるわけではない。何も知らない、知ろうとしない、知らないことについて疑問を持たない、本当の箱入り娘が、外に出ることで、それらの欠損を埋めていく。物語ではあるけれど、若いうちは多少の出遅れがあったとしても一気に取り戻すことができるのだろう、と、若いエネルギィがすこしうらやましくなる。かといって若い時代に戻りたいわけではなく、せっかくこれまで身に着けたものを失いたくなかったり、もう失敗はこりごりだ、と思ったりするので、今は今で足りているのだ。全般として感じるのは、見えなかったものは見ようとしないからだ、との思いだ(違うかもしれないけど、作者が伝えようとしているものと、作者が伝えようとしていると読者が感じるものは必ずしも一致しないだろうし、そう受け止めたという話)。現実社会でも、見ようとしなかったものは見えないし、見ようとしたとたんにいろいろと情報が入ってくることがある。普段生活していると、ぼんやりしていることもそれなりに多いけど、いろいろとみていることも多い。後から、ああ、○○していたね、というと、そんなところ見ていたのかと驚かれることが時々あるけど、そんなにぼんやりしているように見えるのかとこちらが驚いてしまう。もともと切れ者っぽい見た目ではないから余計そうなのかもしれない。日常生活では、周りを見ていた方が、危険を避けられることも多いとおもう。と書いてはみたものの、これは肉眼的な話で、物語の感想として書いたのは、将来への志向とか、他者の感情とかのことだ。相手の感情を想像しない人とは、一緒にいると疲れてしまう。相手の気持ちを考えていないように見えても、あえてそうしている人と、何も考えていない人はわかってしまう(短期間ではわからないけど)。ちゃんと、人の気持ちを想像できているだろうか、と本質的には他人の気持ちがわからないタイプなので、結構考えてしまう。文庫にして全6巻と、さほど分量がある話ではないけど、泉水子の成長を追っていけるこの作品は、読後感が清々しい作品だった。