[読了]機本 伸司 僕たちの終末

僕たちの終末

僕たちの終末




 近未来、太陽の活動が活発になり、人類はこれ以上地球で生活することが不可能であるとの予測が発表された。人々はシェルタを作り、そこへ入る権利を争う。しかし、天文学者の正は別の発想をする。それは恒星間移動をしようというものだった。正はネット上で希望者を募る。不安を抱えた普通の人々はシェルタへの入居権もたやすく得られない今、万が一の確率にもかかわらず、乗船権を得るため”組合”に応募する。果たして彼らは別の恒星(正しくはその周辺にある惑星や衛星)に移動できるのか?
 前作メシアの処方箋では救世主を作製しようとした機本伸司さん。もちろんSFなのですが、その試みは素晴らしいものだったと思います。適度なリアリティとそれを裏付ける知識。一つ一つ把握して読もうとしましたのでかなり時間がかかりました。ディスカッション形式で進められる物語によって、(おそらく)読者が気にかかる点をサポートしつつ、舞台は大掛かりなものとなって行きます。キャラとしてお気に入りなのは岡本ですね。あくまでもキャラとしてですが。”それは理屈に合わない”なんて繰り返し言われたら”うるさぁい!”と怒鳴ってしまいそうです。その場合でも、ここで大声を出すのは理屈に合わないとかいわれてしまいそうですが。正のキャラクタに感情移入はできないものの、物語をリードするためには欠かせない人材であり、こういう人がいるかも、と思ってしまいました。女性陣は突出した個性はなかったように感じました。出番は少なかったものの、終盤で活躍した彼女が良かったですね。
 これまでの作品と同様、壮大な発想で、理解しきれない部分も含めて(前述しましたが)リアリティがあり、良作でした。次回作に期待します。