[読了]古川日出男 13

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 橋本響一は片目のみが色盲という先天的な視覚異常であったが、そのため脳は活性化され、天才となる。しかし、日本と言う土壌では過度に突出した才能は受け入れられず、響一は能力を抑えることが常となる。響一が中学生のとき、ザイールの森から来客があり、それがきっかけとなり響一は高校進学を止め、ザイールへ向かう・・・。
 読み終えたとき、思わずため息をついてしまいました。悪い意味ではなく、あまりの緊張感に呼吸を抑えていたのです。森林の圧倒的な表現力はまるでその場に本当にいるような感覚をもたらしました。今、この暑い時期に出会えたのも入り込みやすかったひとつの理由であり、幸運だったと思います。登場人物それぞれの描写も過剰でなく、でも、その個性が想像できる表現であり、その状況にいたる精神的な過程も十分描かれていました。2部構成になっていて、2部では展開が変わってしまいますが、次第に物語りは収束していきます。このラストをどう受け止めるかは人それぞれと思いますが、スケールの大きさから言えばこれでよかったと思います。とにかく傑作です。残念だったのは感性が鈍いために、おそらく全ての表現を読み手が咀嚼し切れなかっただろうと言うことです。もっと感性の強い方なら更に入り込むことができると思います。それでも、読み終えたあとしばらくは脈拍が速くなっていました。今日、眠れるでしょうか。