木村紺 神戸在住 8巻

神戸在住(8) (アフタヌーンKC)

神戸在住(8) (アフタヌーンKC)

 神戸の大学で美術科に通う辰木桂の日常を描いた作品で、早くも、というのかようやくというのか8冊目です。震災のことを描いていたときは、桂はその場にいなかったことに罪悪感を感じており、それは、とても共感できる内容でした。前作では親しくしていたアクセサリデザイナが亡くなったことでだいぶ落ち込んでいた桂でしたが、だいぶ落ち着いてきたようです。
 我を通す弟がいたり、少し神経質な母親や、包容力のある父親が少しずつでもしっかりと描かれていることから桂が実在の人物であるように感じます。おそらく、と言うか当然モデルである人物はいるでしょうし、多少のデフォルメはあるにしても、桂は木村紺さん自身ではないかと思います。友人たちもそれぞれモデルがいるのかいないのか、とてもリアリティのある人物たちで、桂の生活とその周りの人物が、本当に良く描かれていると思います。
 自称”隻腕の美少女”である愛のキャラクタが突出しているためわかりにくいかもしれませんが、ともにいた仲間たちは誰もが優しく、現実を見つめていて、とてもよい人間関係なのだな、と感じます。本作ではそのときの一人が結婚するのですが、キスシーンでの4人の顔が印象的でした。
 卒業作品を完成させた桂たちですが、ここで鈴木さんの実力に驚き。意外と言えば申し訳ないのですが、家出ばかりしていた少女がどのようにして表現力を身につけたのか、少し気になります。桂も、特別と言われる存在ではないにしても評価されるほどの実力を持っているようです。今後は卒業後の人生が描かれるのでしょうか。もちろん、そうなってくれれば一番うれしいのですが、そろそろ終わりを感じさせられます。最後はもしかしたら、桂が芸術(美術)とは違った表現方法で身を立てることを示唆して終わるのではないかと想像します。冬目景さんも確か美術関係の学校を卒業しているのですが、彼女はもっと力強い学生生活を送っていたのではないかな、となんとなく画風や作風からですが想像します。どちらがいいといった話ではなく、それぞれ経験を生かした作品を描いているな、と思います。