榊一郎 神曲奏界ポリフォニカ

 精霊を操ることができる「神曲楽士」見習いのタタラ・フォロンは事務所の社長であるツゲ・ユフィンリーから初仕事を持ちかけられる。精霊の力を蓄えることができる蓄雷筒に、コーティカルテの力を注ぎ込む、という仕事だ。その仕事を満足にこなすことができなかったフォロンは謝罪に向かうが、その先ではある事件が起きていた……。
 音楽で精霊を操ることができる、というのは面白い設定かも、と思ったのですが、音を文字で書こうとする試みは失敗に終わったと思います。音楽漫画ではTO-YとかBECKがありますが、どちらも音を文字にして表現はしていません。それと同様に、小説なら小説なりに、情景を描くとか何かにたとえるとか、文字なりの方法を使って表現して欲しかったところです。擬音ではないのですが、「ヴぁっ」と書かれても今ひとつその音楽自体を想像しにくいので、そこは残念でした。
 それ以外の表現については、特に問題は無く、第一巻なので、登場人物の紹介の意味合いが強い内容だったと思います。現実に影響力を持つ精霊を操ることができる以外はこの世界とたいした違いはない世界で、想像しやすいといえば想像しやすいのですが、「精霊が存在し、力を持つこと」の影響は大きいはず。そのことによる科学の進歩や生活のこまごました部分に対する影響をどこまで作者が想像し、描くことができるのか楽しみです。あとがきを見ると、手を広げすぎている作者のようなので、あせらず待つことにします。