山本弘 アイの物語

アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

 これはおもしろかった。もともと短編として発表されていた作品をつなげた、作品集のような形になっているけど、初めから構成を考えていたのだろう(当たり前か)。物語は、ひとりのAI人格と、肉体を持った人間とで進められる。まあ、細かい話はさておき、とりあえず読んでみたらどうだろう、と書いて終わってしまおうかとおもうくらいおもしろかった。
 それで終わりにしてもいいのだけど、少しだけ。この本の中で、すべてのヒトは認知症、との言葉が出てくる。それは、確かにそうかも知れないのだけど、それでおわりにして良いものか。論理的な思考ができる、論理的な思考しかできないといってもいいAIたちの導き出すこたえはすばらしい。どうしてヒトにはそれができないのだろうなんておもってしまうほどだ。でも、論理的に突き詰めていくと、100人助かる方法と99人助かる方法があれば、迷いなくを選んでしまう。ヒトだったら、自分の身近なヒトを助けたいと考えることの方が多いでしょう。ここまでぎりぎりならわかりませんが、確実に1億人が多く助かる道が会ったとして、自分ならどうするか、など考えるのはおもしろい。どうするべきか、とどのように行動してしまうかを考える。実際にはそんな決定権を持つ舞台に上がることはないし、ただの思考に過ぎないのですが、自分が捨てられる側に立っても、捨てる側で判断したことと同じことができるのか、とかを考えるのもおもしろい。こうやっていろいろと考えて、ある種の物語にできる人が作家となるのかもしれません。
 ああ、まとまりのない文章だ。とにかく、少しでもAIや近未来に興味をもっている人なら、おもしろく読める作品だとおもいます。