麻耶雄嵩 隻眼の少女

隻眼の少女

隻眼の少女

最後の展開で驚いたものの、それを受け入れた後は、これしかないと思えるような話だった。些少な疑問や不満は有るけれど、とても面白く読めた。
物語は、自殺を決意した青年が、死地と決めて向かった先の伝承から始まる。死ぬ時期を考慮していた青年のもとに、探偵の少女が現れる。この少女がすごい。まあ、これ以上内容には触れないでおこう。
物語の核となる部分に、親子関係がある。ここからは物語の中の親子関係ではなく、ざっくりとした話になる。いつからか、と言っても物心付いたころにはそういったイメージが蔓延していたと記憶しているのだけれど「親は当然子どもをかわいがり、子どもはそれに答えて一生懸命勉強する。いずれ成長した子は親への恩を忘れない」といったテンプレートが出来上がっていた。それに沿えない家庭は、どことなく下に見られていたし、そう見られることを恐れていたようにも感じる。片親だったせいか、なんだかんだで、自身もその考えに囚われてしまい、行動が制限されていた。それが道徳的に良い場合もあったし、残念ながら行動を縮こまらせる場合もあった。いわゆる「ちゃんとした」家庭でもなかったからでもないのだろうけど、ほのぼのとした家庭に憧れはあった。結局それを作ることはできなかったけれど、今となってはそれもありかな、と考えられるようになってきた。言い訳かもしれないし、負け犬の遠吠えかもしれない。それでも、死のうとおもう理由にはならないし、もう少し生きていくつもりだ。
著者の麻耶雄嵩は、寡作なようだけど、話題となる作品を多く手がけているらしい。これまで読んだことがある作品は「メルカトルと美袋のための殺人」のみだけど、正直あまり詳細な内容を覚えていない。美袋も美凪と間違って記憶していたくらい。美袋ってみなぎを変換したら一発で出るのね。本格が苦手だった時期に読んだ記憶はあって、面白かったような気もするのだけど、その後の作品を読んでいないと言うことはあまり気に入らなかったのかもしれない。本作は面白く読めたので、機会があれば他の作品にも手を伸ばすかもしれない。