犬村小六 とある飛空士への追憶
- 作者: 犬村小六,森沢晴行
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: 文庫
- 購入: 59人 クリック: 1,482回
- この商品を含むブログ (441件) を見る
ものすごく正統派の物語であると感じました。ピラミッドの頂点にいる少女と、底辺にいる少年。その出会いと別れが綺麗に描かれています。一応主人公の視点なので冒頭は、何も教育を受けていないはずの少年が妙に航空機などに詳しいことに少し引っかかりを覚えましたが、読んでいくうちに気にならなくなりました。
身分を越えた恋というのはいつの時代も物語になりえるもののようです。もちろん大好きです。実際はどうなのでしょう。ここまで極端なものではなくても結構壁のようなものはあるように思えます。お金持ちの方はさほど気にしていないようでも、無い方からみると結構な壁が感じられます。物を買うにしても、消費するにしてもぜんぜん感覚がちがう。もちろん、お金持ち側に罪はないし、どちらかというとこちらが卑屈になっているだけなのでしょうけど。成金と呼ばれる状態も、お金をたくさん得られるようになったものの使い方がわからないというか、使い道が変な方向にいってしまうのでしょう。お金持ちが続いている家というのは、お金の使い方がわかっている人が多いとおもいます。
この物語のふたりも、ずっと一緒にいたらいろんな齟齬を感じるようになっていたかもしれません。もちろん、どんな人間関係でも、どれだけ気があっているとしても齟齬はあるでしょうけど、それが大きいということ。ただ、どんなにもともとの立場が離れていても惹かれあう相手がいて、その相手と一緒にいられるというのは素敵なことだとおもいます。羨ましい。
物語としてはとてもよく出来ていて、読んでいるときに想像するのは主に海と空なのですが、それがとても想像しやすい。晴れた空、夜の海、雲の中。まだ読んでいない人は海や空の写真を見てからのほうが想像しやすいかもしれません。