竹宮ゆゆ子 とらドラ!10巻

とらドラ10! (電撃文庫)

とらドラ10! (電撃文庫)

 最終巻です。物語をきれいに、というとあっさりしてしまいますが、終わらせることができた作品ではないでしょうか。あちこちで感想が書かれているようなのであまりないようには触れませんが、この作品は子供たちが懸命に動く姿を描くだけではなくて、大人のだらしなさも描いた作品だったのではないかと思います。
 子供のころ接した大人は本当にしっかりしていて、多少へんに感じても「大人」が言っているのだからと思ってしまうくらいの威厳があったような気がします。でも、自分がその年齢(もしくはそれ以上)になってしまうと大人でも迷ったり悩んだりするし、それで出した答えも間違っていることを自覚します。この作品に出てくる大人も、自分のことで精一杯だったり、子供がいるのに自分のことを中心に考えたり、客観的にみるとあらが目立ちます。大人は大人らしくしっかりしたところを子供に見せるべきなのでしょうが、これだけ情報が氾濫すると大人を見限ってしまう子供も多くいるかもしれません。大人といっても、大きくなった子供ぐらいに捉えた方がいいひともいるし、ね。そういった大人のだらしなさを、いやみではない形で書いていたことも評価したいところです。
 あとはスピンオフでどれだけ脇役の面々に焦点を当てるかが気になるところです。