小林めぐみ 回帰祭

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)
小林めぐみの作品は好きで、たぶんこれまで全作品を読んでいるのですが、SFもので一番面白かったのは六分儀の未来シリーズです。それ以来、もちろん面白いと感じているから買い続けて入るもののそれを超える作品はないように感じます。感受性の高い頃に読んでいたのでそれだけ記憶に残っているのかもしれません。
 今回は、あとがきにもあるように「閉鎖系」の話です。結構長い作品だったのでそれだけ世界を作りこんでいるのかな、と思ったのですがそれほどでもありませんでした。まあ、SFを舞台設定の一環とした恋愛小説だったと思えば、それはそれで面白いのですが。
 今回も面白いキャラクタが登場します。六曜博士か、と思うようなうなぎ教授がそれですが、著者はうなぎが好きなのでしょうか。それともたまたまか、ってそんなこと考えても仕方がありません。(みためが)ひと以外の生き物が話すと、それはその生き物の思考なのか、人と同じ能力を持ったほかの生き物なのかと考えてしまいます。作中でもそのことには触れていますが、うなぎ教授は「他のうなぎの思考を知らない」と言います。うん、そのとおりかなと思います。今自分が考えていることも、他のひとが考えることと同じかどうかなんてわからないし、漠然と「ひと」としての思考なのだろうと思っているだけなので、こうしたことに答えを出すのは難しい。
 終わり方も、続きがあるのかないのか、といった終わり方でした。そういった終わり方もありだとは思うのでそのこと自体に文句はないのですが、なんだか物足りない終わり方でした。なんというか、ハヤカワ文庫と、これまでのスニーカー文庫ファンタジア文庫のスタイルで悩んだのかな、という印象を受ける内容でした。続きがあるのなら読みたいと思います。