- 作者: 小野不由美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/09/30
- メディア: 文庫
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作品は、幼いころ神隠しにあった少年高里が主人公です。彼は神隠しにあって一年後に戻ってくるのですが、戻ってきた彼の周りでは不可解な事件が頻発する。中心にいる彼は傷を負わないのですが、周囲の人間は巻き込まれてしまう。少年の周囲で怪我や事故にあうのは、少年に害意を向けた相手であることから、少年に対する態度が人それぞれで変わってしまう、と言う物語です。
何かを迫害することを肯定するわけではないのですが、異質なものが混じっているとこうなってしまうのか、ということが否定できない形で描かれているあたりが怖い。ホラー作品なので怖くて当然なのですが、ハリウッド的な怖さではなくじわじわ来る感じです。不可解で、力が有る存在を目の前にしたらどんな行動をとってしまうだろう、と考えながら読んでいました。広瀬という教生は高里に共感し、彼を守ろうとします。しかし、それもまた彼自身のエゴを満たすためでしかありません。自分のエゴを満たすために彼を守ろうとする者、排除しようとする者、距離を置こうとするもの、阿るものなどいろいろといます。さて、自分はどれなのかと言うと多分距離を置くでしょう。友人関係にあればまた話は変わってくるかもしれませんがもともとはなれたところにいる異質なものに対してはおそらく積極的に近づこうとはしない。これは極端な話なので現実に反映することはないかもしれませんが、規模の小さなことだとそこかしこでおきているはず。そのとき、自分が直面したときに、あとから恥ずかしくならないような行動を取れるようにはしたいな、と考えてしまう作品でした。
この作品は「十二国記」シリーズを読んでいるかいないかで評価(印象)がだいぶ変わってしまうのではないでしょうか。知らなかったら麒麟とか泰麒とかぜんぜん分からなくてちょっと楽しめないと思うし、知っていたら、麒麟の正体とか胎果とかすぐに分かるのでちょっともったいない気もする。個人的にはとても面白く読めました。ちなみに購入するのは2回目だったりします。