海堂尊 イノセントゲリラの祝祭

イノセント・ゲリラの祝祭
 もともとAi(オートプシー・イメージング)の普及のために書き始めたそうなので、話の展開としてはこうなっても当たり前なのでしょうが、なんだか今回は普及色が強すぎたような印象です。読ませる力はすごいと思うし、面白いといえば面白いのですが、小説としての面白さは少し足りないかも。
 ところで、また新しいキャラクタが登場しました。これまでの「姫」と同じで、何らかのスピンオフを考えているのかもしれません。Aiに近いけど異なる概念としてVirtopsyとの言葉が登場します。新しいキャラクタのシオンはその専門家だそうですが、今回はほとんどまったく活躍しませんでした。連続物なので仕方がないといえば仕方がないのですが、その作品単体を読んでも楽しめるような構成になればいいな、と思います。さて、Virtopsyとは画像診断を解剖学的診断と同等に扱うものだそうです。実際にも病理学者や法医学者との軋轢があるのでしょうか。そのあたりはわかりませんが、今後Aiが普及するとして、自分たちのような一般人がそれらの違いを受け入れやすくする土壌作りにはいいのかもしれません。
 死体に対してのイメージングならば、磁力の強さとかあまり気にせず上げていくことが出来るのではないかと思うのですが、あまりその辺についての描写はありませんでした。もちろん、出力を上げるとコストもかかるだろうし、普及させるためには一般的な機能を持っていて、廉価であることのほうが重要だとは思いますが。

ちょっとだけ普及に協力してみました。
ヴァートプシーに関するサイトでの、ヴァートプシーとは、という部分。

Virtopsy Research Projectはユニークな論理的構造から成り立っている。類似した主要研究員の協力の下、異なった焦点から5つのゴールを目指している。
放射線を用いたデジタルイメージングの道具(マルチスライスコンピューテッドトモグラフィ/MSCTとMRI)を法医学的ツールとして活用する。究極的には"侵襲のほとんどない剖検"として臨床医学における"鍵穴手術"に用いる。
・イメージングの技術として(CTやMRI)写真、三次元イメージングの技術を用い、法医学的に正しい知見を得ることが出来るようになるべきである。この技術によって、法医学的-医学的知見が得られる。
・バイオメディカルの道具としての発達と同じくして写真や三次元解析による法医学的知見が得られる。
・たとえば死亡推定時刻のような死後の生化学的情報を得ることが出来る。
・イメージングのデータベースを"仮想剖検(Virtual autopsy)の基本機能"として確立する。

ヴァートプシーは多くの法医学的病理学的分野で使用される広範な革新的技術として創設された。いくつかの懲戒的プロジェクトにはバイオメカニクスと同様に法医学、診断イメージング、核磁気学、コンピュータサイエンスおよびテレマティクスが含まれている。科学的な結果だけではなく、経済的な見返りも期待できる。法医病理学における形態学的知見の解釈、情報収集、記述に関する利点はこの分野における法医学的、病理学的価値を増加させる。
仮想病理学プロジェクトは標準的剖検の技術的なプロセス(人体を切り刻む)を変化させようとしている。(1)現在の放射線イメージングを利用する(2)現在受け入れられている侵襲的な組織の除去(侵襲を最小限にした剖検)の二つを新しいプロトコルとする。その結果は、臨床における法医学、形態学的な法医学の質的なコントロール/質的な認定の総合的基盤となる。
実質的な目標は、法医学的手法におけるヴァートプシーを評価する際の解説、手順、適応、前処理などについて明確に記載されたマニュアルを作るべきだろう。

適当なので(意訳しているところもある)間違いがあれば指摘して欲しいところです。テレマティクスとはこんな意味らしいです。作中の描写はAiがこれに近いかもしれません。
 とりあえず、継続して読むだけの面白さはあると思うので今後も購入する予定。