誉田哲也 武士道シックスティーン

武士道シックスティーン

武士道シックスティーン

かつて剣道をしていたのでちょっとだけ気もちが分かる部分も有る小説でした。剣道をしていたころ、五輪書を読んでいる同世代の人間はいませんでしたが、あえて山で木登りする、ぐらいの不思議な子はいました。握力がつくから、と言って竹を登る子もいました。本人はそれほど強くなりたいと思っていたのかどうか、結構覚えていないものですが、普通に通って普通に練習していたと思います。
実際にそんな稽古をしたことがないので断言はできませんが、剣道の練習中に「蹴り」を入れる先生がいたとして、それに慣れてくることはあったとしてもきっとその門下生はいびつな構えでいびつな動きをするでしょう。何かを正しいとか正しくないとか言うつもりはありませんが、目立つところがなくても続いているものは、結構本質を伝えているからだ、と言う場合が有るのではないかなあと感じました。
語り部が入れ替わっていくスタイルの文章は結構好きです。一人称のみだと視点が限られてしまうし、三人称のみだとどこまで書かれているか分からなくなるときも有るし。この入れ替わるスタイルは、今回のような若者二人だと視点が広がることは少ないかもしれないけれど、互いの想いがどんなふうで、その結果ある行動をとり、それについてどう思ったかが描かれていてとても良かった。続編も出ているようです。ぜひ読みたい。