よしながふみ 西洋骨董洋菓子店

西洋骨董洋菓子店 2 (WINGS COMICS BUNKO)

西洋骨董洋菓子店 2 (WINGS COMICS BUNKO)

以前ドラマになったときに少し気にはなっていたのですが、終っているのか終っていないのかよく分からなかったので購入はしませんでした。今回文庫化されたので(帯に完結と書いてあったので)購入しました。
フラワーオブライフでも思ったのですが、この人はきちんと物語を終らせることができる人だな、と思います。これからも人生は続く、と言った感じの終り方は好きです。主人公は、幼いころ誘拐された経験の有る青年と、同性愛者で天才パティシエの青年、網膜剥離でボクサーの夢を断念した少年です。彼らはそれぞれが重い過去を背負っているものの普段はとても明るい。これは、とてもいい。誰だってそれなりに重ためな過去が有るだろうし、それが人生におよぼしている影響も大きいだろうとは思う。でも、それを表に出すことはあまり好きではありません。もちろん、ちゃんと話すような場であるのなら話すことに異議はないのですが、普段からこんなに不幸なのだとアピールする必要はないのでは。逆に言うと、ちょっと大変な過去があっても明るく生きている人は魅力的に見えるかも。ここで言うちょっと大変な過去と言うのは、昔悪いことをしてしまったと言う感じの過去ではなくて、あまり自分の意思では避けられないような出来事の話。むかし不良のオレオレ自慢は大嫌い。
主人公の一人であるもとボクサーの少年、エイジは「ボクシングは良かったんだ!勝てばよかった!そしたら俺はいらない人間なんかじゃないって思えたから!」と言います。これが結構がつんと来てしまいました。そうなんですよね。あまりどこにいても自分がいていい存在なのかどうかと言うのがよく分からない。今も、仕事をしているから会社にはいてもいいんだなと思うけど、他の会社で同じくらい望まれるかというとそんな自信は全くありません。普段の人間関係でも、基本的には一人が好きといえば好きなのだけど、誰かに必要とされたいとの思いは抜けなくて、もし、誰かに本気で必要とされてしまったらころっと行ってしまうかもしれません。うわあ、ものすごくだまされやすそうです。気をつけないと。
よしながふみさんの作品は、一見大雑把に見える人たちが実は繊細な機微を捉えているとか、その逆とかがあってとても良いです。また折を見て旧作を読んでみたいと思います。