海堂尊 ひかりの剣

ひかりの剣

ひかりの剣

 医療ミステリを書いてきた著者が、医学部のことを書いてはいるものの直接医療には関係の無い、学生の青春を描いた物語です。ジェネラルルージュに登場した速水とジーンワルツに登場した清川が、互いに鎬をけずりあう。速水は基本的に学生のころから変わっていないなと言うイメージでしたが、清川はまだこのころ真面目さが残っている、という印象です。それにしても、大学もいろいろと騒がしかった時代だと思うのですがそういった騒動はぜんぜん出てきません。まあ、フィクションですし、そんなものを描きたいわけではないのでなくていい題材なのですが。
 若者たちの精進する姿は良いのですが、一番の曲者は高階でしょう。多分30代前半なのでしょうがここまで人の思考を読めるとは恐ろしい話です。暗躍する姿は飄々としているようでちょっと恐ろしい。実際にちょっと剣道をしたことがある身としては、竹刀が触れることもできない、と言う事態は考えられない。どこの道場にもある程度の達人がいるものですが、彼らが本気で接していなかったとしてもそこまでの実力差は無いでしょう。達人の孫だという朝比奈と言う登場人物がいますが、ちょっとライトノベルっぽいキャラクタだと感じました。
 面白かったのですが、これまでのような作品を期待していたらちょっと肩透かしを食うかもしれません。