上橋菜穂子 精霊の守り人・闇の守り人・夢の守り人

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

闇の守り人 (新潮文庫)

闇の守り人 (新潮文庫)

夢の守り人 (新潮文庫)

夢の守り人 (新潮文庫)

各地で評判のこのシリーズ。全部文庫で出てから読もうかなと思っていたのですがそう考えているシリーズが他にもあるので、少しずつ読んでみようと思いました。もともと児童文学を書いている人だからかとても読みやすい文章で、世界もしっかりと構築されているので好ましい。多くの人が絶賛するのもわかる良さですが「すばらしい児童向けファンタジィ」ではあるものの若干物足りなさも感じる。その理由は何なのかを考えたところ、完全に悪い人がいないことかもしれません。もちろんそんな人はいなくてもいいのですが、物語としては対抗すべき何かがあったほうがいいのかな、と思ってしまいます。そう思ってしまうのは最近の二元論的な物語に毒されているのかもしれない。悪いものがいなくても克服すべき課題はあって、それは自己に向き合わなければ克服できないことであったり、誰かのためにしかできないことであったりします。本来のファンタジィと言うか「現実に投影できるような主題」のある作品ではないでしょうか。もちろん、どのような作品からもそういったことを読み取ろうとすればできないことはないのでしょうが、明確な意図を持って紡がれた物語であることに価値がある、なんて思ったり。
このあとどう物語が広がるのか楽しみです。