多崎 礼 本の姫は謳う

“本の姫”は謳う〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

“本の姫”は謳う〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

まだ新人のようですが、十分面白い作品でした。もちろん業界では先輩後輩、売れ行きの違いなどで待遇などの違いがあるにしても、読者からすれば新人であろうが面白いものは面白く読めるのが本のいいところ。特にまだ名前も知らない作家で面白い作品に当たるととてもラッキィな感じがします。
物語は世界中に散らばった「文字」を集める「本に封印された姫」とそれに伴って旅をする青年が主人公です。この物語で言う「本」は今ここにある本とは違ったもので、その設定は読んでからのお楽しみということで書きませんが、なかなか面白い。違う世界の物語なので好き勝手にして欲しいし、多少の違和があってもそれが気にならないほどのテンポの良さなので今後もこの感じを進めてほしい。
二つ以上の物語が平行して進む作品はいくつかあるものの、一つ一つの間隔が短くて、前の話を忘れないうちにつながっていくのも良い。かといってぶつ切れしてしまうわけでもなく、そのバランスがとても良い。脇役の魅力がもう一息あればよかったかな、と思う部分もありますが、今後が期待できる作品です。全4巻だそうですのでまとまりもよさそう。