支倉凍砂 狼と香辛料 6巻

狼と香辛料 (6) (電撃文庫)

狼と香辛料 (6) (電撃文庫)

 旅のなかで相手のことを少しずつ理解して、関係の親密さが深くなってきたホロとロレンスです。旅には終わりがあるとの主題が前回から続いていて、いろんな場面でおいていかれる立場のものとしては少々複雑な思いで読んでいました。楽しいのは現在がピークだという実感は関係がずっと続くと期待している場面やそのピークが長く続くとわかりづらい。それでも旅にはある期間の区切りがあって、そのほかでも区切りがある関係では楽しさのピークを実感できることが多い。たとえば、一年間と限られた予備校生活とか。その楽しさがピークだと感じられたとき人がとる行動はどのようなものでしょうか。そのまま区切りを超えてたのしさを保ちたい、ピークの時点で終わらせたい、たのしいままだと悲しいので、元通りに戻ってからおわらせたいなど、いろいろな考え方があると思います。ホロとロレンスはそのどれでもない、もうひとつの選択をします。それがいい方向に動くのか悪い方向に動くのかはわかりません。それでも、読者としてはいい方向に動いてほしい。頭の中にはひとつの幸せな結末があって、何かを投影しているわけではありませんがその場面に行き着いてほしいと思っています。吸血鬼のお仕事みたいに気鬱なおわり方をする作品もあるので油断は禁物ですが、期待も含めて今後がとても楽しみ。
 今回は大きなやり取りはなかったものの、あるなぞを残してこの巻はおわりました。その疑問が出てきたとき、もしかしてああしているのかなと思って読み進め、きっと答えが出るだろうと思っていたのですがそのままおわってしまいます。それがあっているのか間違っているのかも次巻でわかるのでしょうか。
 ロレンスは頭が良くてホロの考えをいろいろと先取りしようとするのですが、それが逆に考えを狭めているところもみられます。いろいろ考えて発言や行動をした挙句から回りというのを良くやってしまうのであまりひとごとではありませんでした。素直になればいいのに、とひとごとなので思ってしまいます。まあ、素直になればなったでホロにからかわれたり失望されたりするのでそうもいかないのでしょう。これまで順調に面白く進んでいる作品です。アニメになっても見ることはないでしょうが、声ぐらいは一度聞いてみてもいいかも、と思っています。