彩雲国物語 隣の百合は白

彩雲国物語 隣の百合は白 (角川ビーンズ文庫)

彩雲国物語 隣の百合は白 (角川ビーンズ文庫)

長編ものはある程度の刊行ペースを維持してくれないと話を忘れてしまいがちですが、この作者はかなり一定のペースで執筆してくれるのでありがたい。今回は短編集で、これまで舞台になった物語の間を埋めるような話です。深刻なものからお笑いまであってとても面白い。わざとだとは思うのですが、この作品の登場人物が抱えるコンプレクスはかなり単純化されています。実際には同じような悩みを抱えている人がたくさんいて、そのわずかな違いが個性になっている部分もあるのですが、この作品では美点も欠点もかなり大げさに表すことで登場人物の個性を引き立てています。
ほとんどが美形の登場人物で、最近はあまりそういった表現はないものの秀麗も十人並みの容姿とあります。それでもイラストになればあれだけかわいらしく描かれるのでもしかしたら少々頭の中で修正が必要かもしれません。短編集の一話目では超然としている黄奇人ですが、別の物語ではこれでもかといわんばかりにかわいらしく描かれています。綺麗な顔を持って生まれることは望んでいなかったことだとしてもそれを維持するためには結構努力が必要だと思われ、きっと維持するためにいろいろしているのでしょう。そう考えた理由は本文中にあります。
まあ、とにかくこの巻は黎深の奇行観察大会なのでそれを楽しめば良いかと思います。お金持ちで能力があったらどこか落ちをつけたくなるのかもしれません。それにしても絳攸があんな拾われ方をしていたとは。そのころは素直でかわいかったんですね。