- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: 単行本
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かつての医療界とはこんな感じだったのだろうと思わせる描写があちこちにあって、今は考えられないような接待があったり、スライドの作成を肩代わりしているところが面白い。もちろん、今現在医療にかかわっているひとたちは不当に攻められることもあればこんな接待を受けている人もほとんどいないでしょうし、この当時いい思いをして、ふざけるなとの思いもあるでしょうが、それが是正されていることも感じられるのが良い。
医療界もずいぶん変わってきて、とにかく疾患部分を治せばいいと考えていた人が多数だった(用に思える)時代からそれぞれを個人として尊重しなければいけないと考えられるようになってきました。当たり前といえば当たり前かもしれませんが、かつては治療をするのは医者、立ち直るのは自分の力、と考えられていたのではないでしょうか。だから「赤ひげ先生」のような話がもてはやされていたのかもしれません。
この話について思うことを書いていたら長くなってしまうので本編に戻ります。作者は医者であることから、医者何年目ではこんな風だという描写が現実味を帯びていてとても興味深い。どこどこの血管が、と描写されていてもわかりにくい部分もあって、たまに立ち止まって調べたりするのですが(おそらく)正しい描写で、、ちょっとした知識が身につくのも良い。話の流れはずいぶん王道を行くような流れなので途中で、ある医者が取った処置の理由は想像がつくのですがだからといってつまらないわけではありません。
あと、未来につながる田口なの登場人物が現れるのも面白く、これまでの作品を読んでいる必要はない構成になっているものの、既読だともっと楽しめること請け合いです。
次はどの時代が舞台になるのか、それとも場所が変わるのかわかりませんが、田口やネコなどの個性的な登場人物がいればどこを舞台にしても面白いかもしれません。AIの技術など、近作では少々近未来予想が過ぎる部分があったように思えたので、ここで過去の出来事を描いたのはよかった。次回作にも期待です。