米澤穂信 インシテミル

インシテミル
 求人情報の誤植と思われるような高額のアルバイトを発見した結城。そのきっかけになった美女は少々浮世離れしているように見えた。ためらいつつもアルバイトに応募した結城は、お金持ちの道楽というには狂気に満ちている実験に巻き込まれることになった。
 以前TVドラマ化された作品に似たようなものがあった気がしますがタイトルは思い出せません。人工的に作られた密室とそれぞれに与えられた武器。その武器は何なのか、疑心暗鬼をもたらすために仕掛けられた罠は、などいろいろ推理する点はあるのですが、少々強引な部分も目に付きます。これまでの米澤穂信作品ではもっとも合わなかった作品でした。極限状態に追い込まれると通常では考えにくいような行動をとるのかもしれませんが、それにしても不可解な部分が多い。続き物である可能性も示唆されてはいるものの、基本的には単作で完結しているほうが望ましい。
 そういった疑問点を放置するのもひとつの手段かと思いますがこういった推理ものではある程度疑問に残る部分は明かしてほしかった。まあ、推理小説にそれほどなじみがないからかもしれませんが、もっとなじみのない読者もたくさんいるはずなのであまり理由にはなりません。文章は変わらず米澤穂信のものだと感じられる文章でとても読みやすいのですが、視点が中途半端に感じられる部分もあり、入り込みにくい作品でした。ボトルネックとは違ったもやもや感が残る作品でした。